【Weekly accounting journal】vol.354~iTunesの追徴課税~
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇vol.354-2016.09.19
☆☆☆ Weekly Accounting Journal ☆☆☆
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こんにちは、エキスパーツリンクの紺野です。日本の会計基準は、今、IFRS
で揺れ動いています。一方で税制も改正されており、上場会社及び上場準備会
社の決算・経理実務は今後も引き続き、目まぐるしく変化していきます。これ
らのエッセンスを、上場会社及び上場準備会社の経理担当者の皆さん向けに、
出来る限り分かりやすくお伝えします。何らかの「気づき」をご提供すること
が出来れば幸いです。仕事の合間に軽くどうぞ!
文中意見にわたる部分は私どもの私見にもとづきます。このメールマガジン
の情報をもとに実務に適用される場合には、監査法人さんや顧問税理士さん等
にご確認ください。もちろん、エキスパーツリンクでもまずは無料で検討させ
ていただきます。
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◆◇今週のCONTENTS◆◇
1.[NEWS]iTunesに120億円追徴 国税、源泉徴収漏れ指摘
2.[税務]食事代の税務
3.[税務]税務上、売上原価の見積計上は認められる
4.[NEWS]新日本監査法人、幹部社員の「退職勧奨」導入
5.[NEWS]従業員を請負偽装契約 源泉所得税、消費税逃れ
6.[編集後記]
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1.[NEWS]iTunesに120億円追徴 国税、源泉徴収漏れ指摘
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BEPSで話題のアップルですが、日本法人が源泉漏れを指摘されたようです。
“米アップルの子会社で日本法人の「iTunes(アイチューンズ)」(東
京都港区)が、音楽・映像の配信サービスのソフトウェア使用料をめぐって東
京国税局から所得税の源泉徴収漏れを指摘され、約120億円を追徴課税され
たことがわかった。同社は指摘を受け入れ、全額納付したとみられる。”
“実際には、iTunes社からアップルジャパン(港区)に別の名目で支払
いが行われていた。アップルジャパンはシンガポールのアップル関連会社を経
由してアイルランド子会社からiPhoneなどを仕入れていた。その際に、
使用料に相当する額が製品価格に上乗せされてアイルランド子会社に流れてい
た。”
“国税局は、こうした製品取引などを絡めた一連の支払いが、アイルランド子
会社に対する使用料の支払いに該当するとし、使用料の額を2014年までの
約2年間で約600億円と認定した。これにかかる源泉所得税約120億円を
追徴したとされる。”
ここで、いくつか考えました。
まず租税条約。日本とシンガポールの間には租税条約があり、使用料の限度税
率は10%です。きちんと事前に租税条約に関する届出書を提出していれば10%
でよかったはずで、さらにはこの届出書、事後的にでも提出すれば租税条約に
従い、10%でよいはずです。ここはどうなっているのか。
もう一つは名目。シンガポールの関連会社に支払ったのは、製品価格であって
使用料ではないはずです。この点については、以下の通達があります。
所得税法基本通達
「161-35 法第161条第1項第11号イの工業所有権等の使用料とは、工業所
有権等の実施、使用、採用、提供若しくは伝授又は工業所有権等に係る実
施権若しくは使用権の設定、許諾若しくはその譲渡の承諾につき支払を受
ける対価の一切をいい、同号ロの著作権の使用料とは、著作物(著作権法第
2条第1項第1号((定義))に規定する著作物をいう。以下この項において同
じ。)の複製、上演、演奏、放送、展示、上映、翻訳、編曲、脚色、映画化そ
の他著作物の利用又は出版権の設定につき支払を受ける対価の一切をいうので
あるから、これらの使用料には、契約を締結するに当たって支払を受けるいわ
ゆる頭金、権利金等のほか、これらのものを提供し、又は伝授するために要す
る費用に充てるものとして支払を受けるものも含まれることに留意する(平
28課2-4、課法11-8、課審5-5改正)。」
このように、使用料とは「~対価の”一切”」をいうので例え製品価格に含ま
れていても、あくまで使用料だということなのでしょう。
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2.[税務]食事代の税務
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従業員に食事代を支給することもあるでしょう。その場合の税務上の扱いはど
のようになっているか、確認しておきましょう。
<昼食代>
以下の要件を満たせば、法人は福利厚生費として処理し、従業員は給与として
課税されません。
・役員や使用人が食事の価額の半分以上を負担していること。
・次の金額が1か月当たり3,500円(税抜き)以下であること。
(食事の価額)-(役員や使用人が負担している金額)
ここでいう食事の価額は、次の金額になります。
(1) 仕出し弁当などを取り寄せて支給している場合には、業者に支払う金額
(2) 社員食堂などで会社が作った食事を支給している場合には、食事の材料
費や調味料など食事を作るために直接かかった費用の合計額
(会社が負担している場合について)
これを超える金額を会社が負担している場合はどうなるかというと給与扱いさ
れますので、源泉の対象としなければなりません。
(従業員からの負担金について)
従業員が負担している金額については課税資産の譲渡の対価に該当しますので
消費税の課税の対象となります。
<夕食代>
残業又は宿日直を行うときに支給する食事は無料で支給しても課税しなくても
よいことになっています。
ただし、これ、「その者の通常の勤務時間外における勤務としてこれらの勤務
を行った者に限る。」とされていますので、残業ではなく、定時が深夜である
という場合は認められません。
一方で、現金で食事代の補助をする場合には、深夜勤務者に夜食の支給ができ
ないために1食当たり300円(税抜き)以下の金額を支給する場合を除き、補
助をする全額が給与として課税されます。
つまり、残業に伴う夕食代は現物支給ならいいんですよ。給与になりません。
これは、飲食店などで食事をする場合、会社がコンビニ弁当などを購入して支
給する場合、従業員が外食や弁当購入で食事代を立て替えて会社が精算した場
合、いずれも大丈夫ですけれども、現物支給と認められない場合は給与になっ
てしまいます。つまりここでは領収証が重要なわけですね。領収証がなければ
給与扱いするしかないでしょう。上限は1,000円から1,500円と言われてい
ます。あまりに高いものはだめなのは当然ですよね。
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3.[税務]税務上、売上原価の見積計上は認められる
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企業会計上は、引当金といって、まだ債務が確定しているわけではありません
が、発生の可能性が高く、将来の特定の費用または損失であり、発生が当期以
前の事象に起因しており、発生の可能性が高く、金額を合理的に見積もること
ができる場合は、費用又は損失の計上が必要になりますね。
これに対して、税務は、引当金は一部(貸倒引当金や返品調整引当金)を除き、
引当金は損金算入できません。
それでは、税務上は見積計上は認められないのかというと、そうではありませ
ん。
法人税法では、損金の額について、
売上原価については、個別的対応によりその収益が計上された事業年度に
販管費については、期間的対応により発生した事業年度に
損失については、発生した事業年度に
それぞれ損金の額として計上されることになります。
そして、法人税基本通達2-2-1では、以下のように定めています。
“法第22条第3項第1号《損金の額に算入される売上原価等》に規定する
「当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる
原価」(以下2-2-1において「売上原価等」という。)となるべき費用の額
の全部又は一部が当該事業年度終了の日までに確定していない場合には、同
日の現況によりその金額を「適正に見積る」ものとする。この場合において、
その確定していない費用が売上原価等となるべき費用かどうかは、当該売上
原価等に係る資産の販売若しくは譲渡又は役務の提供に関する契約の内容、
当該費用の性質等を勘案して合理的に判断するのであるが、たとえその販売、
譲渡又は提供に関連して発生する費用であっても、単なる事後的費用の性格
を有するものはこれに含まれないことに留意する。”
この例としては法人税基本通達2-1-10に定める機械設備等を販売したことに
伴い、その据付工事を行う場合で、機械設備等の搬入段階で収益計上し、据
付工事の対価を見積計上する場合が挙げられます。
「単なる事後的費用」はだめですが、これに該当するものがないかどうか見
直しされてみてはいかがでしょうか。いくつかあるかもしれません。
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4.[NEWS]新日本監査法人、幹部社員の「退職勧奨」導入
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新日本監査法人がパートナーの退職勧奨制度を導入するそうです。
日経有料記事
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO07304380V10C16A9DTA000/
“監査品質の優劣に応じてパートナーを5階層で評価する制度を6月に導入し
た。下位の2階層に入ってしまうと、業務改善に向けた計画を策定しなければ
ならない。足元で改善が必要なパートナーは全体の2割近くにのぼる。1年間
で改善できない場合、退職を促す制度を新たに加える。”
監査品質の優劣ってどういうことなんでしょうね。監査については審査などに
より一定の品質を確保しているはずですが、審査会に持ち込んだが、ひっくり
返されたパートナーということなんでしょうか。よくわかりませんが、監査法
人のパートナーも大変です。一定の年齢を超えて監査法人を追い出されたらそ
の後の人生うまくいくのかどうか。
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5.[NEWS]従業員を請負偽装契約 源泉所得税、消費税逃れ
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実質的には雇用契約であるのもかかわらず、請負契約をすることによって源泉
所得税や消費税の納付を免れることは脱税として重加算の対象になることをご
紹介します。
http://www.sankei.com/west/news/160913/wst1609130010-n1.html
“関係者によると、同社はメーカーから請け負った業務を、従業員一人一人に、
さらに請け負わせる形を取ることで、従業員に支払う対価を賃金(給与所得)
ではなく、所得税の源泉徴収義務を負わない外注費(事業所得)として処理。
源泉所得税を計上していなかった。”
“これに対し国税局は、社会保険料を労使折半で負担するなど実質的に雇用関
係にあるにもかかわらず、請負の書類を一方的に作成して給与所得を事業所得
に仮装したと認定し、源泉所得税の納付漏れを指摘。”
“追徴税額は5年間で源泉所得税が重加算税を含め数千万円、消費税は重加算
税と無申告加算税を含め1億円前後。同社は源泉所得税は自主納付し、消費税
は修正申告したという。”
雇用かどうかは、形式上の契約だけではなく、実態で判断されるということで
すね。私は実質的にどうかということを常に考えるようにしています。
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6.[編集後記]
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パラリンピックも終わりましたね。今回のパラリンピックではいくつか知らな
かった事実を知り、考えさせられました。
一つは、障害者の記録が健常者に近づいていること。リオの男子走り幅跳びの
金メダリストの記録は、オリンピックの8m38cmに対して、パラリンピックの
足に障害のあるクラスでは8m21cmだそうです。恐ろしい記録ですよね。映像み
ましたが、義足の側でジャンプするんですね。あれで飛距離がでているような
感じもします。もう障害者と健常者の区別はいらなくなってきているのかもし
れません。
もう一つは、パラリンピック参加者に戦場で負傷した元兵士の割合が増えてい
ること。もともとパラリンピックの起源は、1948年、第二次大戦の負傷兵によ
るアーチェリー大会がもとだったということなのです。アメリカなどは負傷兵
を積極的にパラリンピックに参加させているようです。その目的は、負傷兵を
丁重に扱い、戦争に関する政府への不満や批判を抑えるということのようで、
なかには、これによって自信を取り戻し、再び戦場に赴く負傷兵もいるようで
す。パラリンピックと戦争。こんなつながりがあるなんて。もちろん負傷兵が
参加することに問題があるとは思いませんが、再び戦場にいくとか、そのこと
を国が支援しているなんて、ちょっとショックでした。
トップページ
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個人会計士による会社法監査
http://kaishaho-kansa.com/audit/personal/
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*発行人: エキスパーツリンク
公認会計士・税理士・公認内部監査人(CIA)inactive 紺野良一
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