◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇vol.353-2016.09.14
      
    ☆☆☆ Weekly Accounting Journal ☆☆☆

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
こんにちは、エキスパーツリンクの紺野です。日本の会計基準は、今、IFRS
で揺れ動いています。一方で税制も改正されており、上場会社及び上場準備会
社の決算・経理実務は今後も引き続き、目まぐるしく変化していきます。これ
らのエッセンスを、上場会社及び上場準備会社の経理担当者の皆さん向けに、
出来る限り分かりやすくお伝えします。何らかの「気づき」をご提供すること
が出来れば幸いです。仕事の合間に軽くどうぞ!

文中意見にわたる部分は私どもの私見にもとづきます。このメールマガジン
の情報をもとに実務に適用される場合には、監査法人さんや顧問税理士さん等
にご確認ください。もちろん、エキスパーツリンクでもまずは無料で検討させ
ていただきます。

===================================
移転価格文書の作成、更新はお済ですか?
・BEPS対応しなければならない。
・移転価格文書の作成、どうすればいいかわからない。
・一度作成してあるけど、その後、更新していない。
など、移転価格に関するご相談はエキスパーツリンクにどうぞ!
http://www.expertslink.jp/service/transfer/
===================================
===================================
エキスパーツリンク、公認会計士紺野良一にご意見、ご要望、ご相談など
ありましたら、こちらにどうぞ。紺野に直接届きます。
http://clap.mag2.com/hesouwraga
===================================

◆◇今週のCONTENTS◆◇
1.[NEWS]アップバンク元役員の手口
2.[NEWS]監査法人における開放的な土壌作りの必要性?
3.[NEWS]トーマツ「空騒ぎ」で監査人降板
4.[NEWS]納得!財務業績と測定の連携に関するペーパー提出
5.[最新J-GAAP&税務]パフォーマンス・シェア型のリストリクテッドストック
6.[編集後記]

===================================
1.[NEWS]アップバンク元役員の手口
===================================
私この元役員の手口について、以前以下のように書いています。

“一般的には、広告費は金額が大きいものは証憑との突合せがなされていると
思われますが、相手先と組まれた場合には、証憑との突合せでも真の実在性
は判明せず、このように不正が発見できない可能性は否定できないと思いま
す。国税のように、調査に時間をかけ、反面を行うことができればいいの
ですが、短い時間で監査を行う必要がある場合、発見は難しいかもしれませ
ん。ただ、元役員がいう「稚拙」な手口がどの程度「稚拙」なのか、今後も
追いたいと思います。”

その手口ですが、

http://www.asahi.com/articles/ASJ9F3J9JJ9FUTIL017.html

「木村容疑者は2013年6月~15年8月に計21回、同社が運営するネッ
 トワーク上にアプリが登録され、その中に広告が掲示されたかのようにみせ
 かけてアプリ開発者への報酬名目で送金するなどし、同社から計1億360
 0万円をだまし取った疑いがある。」

ということだったようですね。これ、簡単にはわからないのではないでしょう
か。

本人は、「表計算ソフトの金額や送金先を改ざんしただけの稚拙な手口で、調
べればわかる」「上場時に会社や監査法人、証券会社が調べればわかったはず
だ」と話しています。

どこかに稚拙な部分があるのかもしれませんが、それなりの時間と権限を要す
るのではないでしょうか。監査も大変です。

===================================
2.[NEWS]監査法人における開放的な土壌作りの必要性?
===================================
「金融庁は12日、監査法人のガバナンス・コードを策定するための有識者会
 議(座長=関哲夫・みずほフィナンシャルグループ(8411.T)取締役)を開き、
 具体的な指針作りに着手した。会議では、監査法人における開放的な土壌作
 りの必要性が1つの論点になった。」

とのことです。

http://jp.reuters.com/article/japan-fsa-idJPKCN11I0N8

何のことかなと思いましたが、

「「開放的な文化の保持」は、監査法人の統治指針を先行導入した英国やオラ
 ンダで採用されているもので、監査のプロセスで浮上した問題点を共有し、
 議論するために、監査法人は外部だけでなく内部でも十分にコミュニケーシ
 ョンを取るべきだとする原則だ。」

なるほど、そういうことですね。

監査法人内部でのコミュニケーションについては、私も離れてしまってから随
分経ちますので、今は違っているのかもしれませんが、手を動かすのが下っ端
なのですが、サインする先生方との経験、知識、風格などがあまりに違いすぎ
て、話もしづらい雰囲気になってしまうことがあったように思います。やはり、
偉い人ほど、会話がはずむような雰囲気づくりを心掛けるべきだと思います。
そして、若い人も何か変だと思ったら、恥ずかしがらずに、どんどん口にすべ
きなのかもしれません。やはり監査は基本的にはチームプレイですから。

===================================
3.[NEWS]トーマツ「空騒ぎ」で監査人降板
===================================

「空騒ぎ」?

フィットという上場会社に対する監査人のトーマツの対応が、まあ言ってしま
えば大げさだということのようです。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160907-00000001-facta-bus_all

“フィットは7月29日付で「会計監査人の異動に関するお知らせ」を発表。
任期満了となったトーマツが監査から降りる意向を示してきたとの内容だ
が、実際には「フィットがトーマツに不信感を募らせて交代させることを決
めた」(証券会社)という。”

ここに至る流れは以下のとおりです。

“会計監査を受け持つ大手監査法人トーマツが突如「(太陽光発電などの)エ
 ナジー事業の平成28年4月以降に計上すべき売上取引の一部が、平成28年
3月に計上されている可能性がある」と指摘した。決算を発表して有価証券
報告書を作成し株主総会も開かなくてはならない時期に、監査証明にハンコ
をつかないと言い出したのだ。”

何がこの可能性を疑わせているのかというと、後述の第三者委員会の報告書に
あるのですが、

“平成28年3月期において受領書の日付と実際の受領書作成日が大幅に乖離
していた取引等が相当数発生していた”

ということのようです。

そして、トーマツの提案で第三者委員会を設置して調査をすることになりまし
たが、その調査の結果、

“その結果、7月29日に発表した決算では、当初は85億円を見込んでいた売
上高が計画に届かず74億円で着地した。営業利益は12億円の見込みが11
億円と修正幅は小さく「赤字決算を黒字に見せかけた」といった東芝的
な悪質性は感じられない。”

ということだったようですね。

“第三者委を設置して調査を尽くすよう提案したのはトーマツだが、そもそ
 もわざわざ第三者委を立ち上げるほどの深刻な問題だったのか疑問符がつ
 く。”

と言われています。

結果として、トーマツは誤った監査意見は出していないわけです。この点は
私は評価したいと思います。

では、果たしてトーマツの対応が空騒ぎだったのか。今これだけ監査人は疑
心暗鬼になっている、会社を信じなくなっている、というふうに理解すべき
で、これは、監査人と被監査会社の関係において、監査人の風当りばかりが
強いことに起因するものではないでしょうか。この件についても、経営者側
がタイムリーで適正なディスクローズの重要性を十分に理解し、疑念を晴ら
すような対応をしていれば、第三者委員会というところまではいかなかった
のではないかと思います。

ちゃんとやれ、ちゃんとやれ、と監査人には厳しいことばかり言って、厳し
い対応をすれば、「空騒ぎ」といわれてはたまりません。ただ、もう少し早
い段階での対応はできなかったかとは思います。

実際のところはわかりませんけど。。。私はこんなふうに思いました。

===================================
4.[NEWS]納得!財務業績と測定の連携に関するペーパー提出
===================================
ASBJは、”2016年9月に予定されている会計基準アドバイザリー・フォーラ
ム(ASAF)会議での討議に使用するため、財務業績と測定に関するペーパー
「財務業績と測定の連携」を提出しました。”

https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/iasb/discussion/discussion_meeting/asaf20160907.shtml

“「概念フレームワーク」は、次の事項に対処することによって改善できると
 強く考えている”そうです。

“純損益計算書が財務業績に関する主要な源泉である以上、「概念フレームワ
 ーク」は、最低限、純損益に関する情報が有するべき基本的な性質を記述す
 べきである。”

“有用性のある純損益を算定するためには、測定基礎を、財政状態計算書の観
 点と純損益計算書の観点からそれぞれ適切に選択すべきである。「概念フレ
 ームワーク」は、測定基礎は、まず、純損益計算書の観点から選択すべきで
 あり、当該測定基礎は、純損益に関する情報が有するべき基本的な性質を有
 すべきである旨を記載すべきであり、それを行うにあたり、純損益と測定の
 連携を図る必要がある。”

とのことですね。本当そうですね。純損益の算定は重要です。

===================================
5.[最新J-GAAP&税務]パフォーマンス・シェア型のリストリクテッド
           ストック
===================================
リストリクテッドストックは、何度かご紹介している特定譲渡制限付株式のこ
とですね。

税務通信No.3424によると、

“現在、『譲渡制限付株式報酬制度』の導入を表明した企業は、全8社となっ
ている(本誌調べ/9月7日時点)。”

“いわゆるパフォーマンス・シェア型の譲渡制限付株式を導入する企業もあ
る。”

とのことです。

“パフォーマンス・シェア”とは、

「業績目標を達成した場合に、株式等が支給されるもの」

をいいます。

で、“パフォーマンス・シェア型のリストリクテッドストック(RS)”とは、

逆に「業績目標を達成しなかった場合に、譲渡制限の解除されなかったRSを
没収する」

ものをいいます。

特定譲渡制限付株式の発行にあたっては、「無償取得事由」を定める必要があり
ます。これを定めないと譲渡制限が解除されたときに損金算入できないので定
めます。

この「無償取得事由」は、

・勤務条件
・業績条件が達成されないこと

等です。

一般的なRSといわれるものは、うち、「勤務条件」のみを定め、パフォーマン
ス・シェア型のRSは、「勤務条件」に加え、「業績条件が達成されないこと」
を含めたものということになるわけです。

「勤務条件」とは、譲渡制限期間内の所定の期間勤務を継続しないこと、等で
す。

「業績条件が達成されないこと」とは、法人の業績があらかじめ定めた基準に
達しないこと、等です。当該税務通信では、三菱地所がTSR(株主総利回)を
同業他社と比較して評価する仕組みが紹介されています。

で、この会計処理と税務なのですが、前もご紹介したことがありますが、

報酬債権3,000万円で、特定譲渡制限付株式300株を発行し、制限期間は株式
付与から三年とする場合、

会計は、
報酬債権付与及び株式発行時 前払費用等 3,000 / 資本金等 3,000
役務提供(1年目)       株式報酬費用 1,000 / 前払費用等 1,000
役務提供(2年目)       株式報酬費用 1,000 / 前払費用等 1,000
役務提供(3年目)       株式報酬費用 1,000 / 前払費用等 1,000

となります。税務上は、3年の期間が経過して譲渡制限が解除された段階で損
金に入りますので、一時差異として税効果の対象になるように思われますが、
無償取得事由が発生してしまうリスクを考えると繰延税金資産を計上できるの
かどうか、どうでしょうか。私は、勤務条件のみであれば損金算入の要件は
満たす可能性は高いと思われますが、業績条件については個別に検討するしか
ないように思います。厳しいケースも多いのではないでしょうか。

でこれがパフォーマンス・シェア型であって、業績が達成されずに没収された
らどうなるんでしょうか。

~新たな株式報酬(いわゆる「リストリクテッド・ストック」)の導入等の手引~
(平成28年6月3日時点版) 経済産業省産業組織課によると、

(会計)
Q5
“(中略)その部分に相当する前払費用等を取崩し、同額を損失処理すること
などが考えられます。”

(税務)
Q2-8
“役員等から税務の提供につき給与等課税事由が生じないため、法人の各事業
年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入されません。”

ということなんですが。無償取得というのは、株式を会社が取得することにな
るわけですので、自己株式が借方にくる仕訳かと思っていましたが、違うんで
すね。損失処理された分は社外流出にするんでしょうね。

===================================
6.[編集後記]
===================================
シンギュラリティという言葉はご存じでしょうか。Wikipediaでは、
“シンギュラリティ(Singularity)とは、人工知能が人間の能力を超えるこ
とで起こる出来事とされ、テクノロジーが急速に変化し、それにより甚大な影
響がもたらされ、人間の生活が後戻りできないほどに変容してしまうとする未
来予測のこと。未来研究においては、正確かつ信頼できる、人類の技術開発の
歴史から推測され得る未来モデルの限界点と位置づけられている。”
とされています。
わかりにくいですが、“要はほとんどの仕事で人間が不要とされる状態”とい
うことのようです。このシンギュラリティの到来は2045年とされており、現在
はその前段階であるプレ・シンギュラリティの時代だそうです。ITの普及によ
る第3次産業革命を経て、シンギュラリティの時代に起きるものは第5次産業
革命。今はAI、ロボット、VRなど、その間に位置する第4次産業革命が猛烈
に動きだしていると言われています。
シンギュラリティの時代になってしまったら人間は一体どうなるのでしょうか。
全部機械がやってくれちゃう。人間は働く必要がなくなるのでしょうか。しか
し、労働自体がよろこびであるという考え方も多くのかたが多かれ少なかれあ
りますよね。人間はどこに行こうとしているのか。
とりあえずシンギュラリティの時代に生まれなくてよかったと思っています。

トップページ
http://kaishaho-kansa.com/
個人会計士による会社法監査
http://kaishaho-kansa.com/audit/personal/

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
*発行人: エキスパーツリンク
 公認会計士・税理士・公認内部監査人(CIA) 紺野良一
*URL: http://www.expertslink.jp
 →決算・開示サポート、内部統制、会計に強い税理士をお求めならこちら
*E-mail: <info@expertslink.jp>
 転送はご自由に!
*解除はこちらから
 →http://www.mag2.com/m/0001039481.html
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~