◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇vol.314-2015.11.30
      
   ☆☆☆ Weekly Accounting Journal ☆☆☆

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こんにちは、エキスパーツリンクの紺野です。日本の会計基準は、今、IFRS
で揺れ動いています。一方で税制も改正されており、上場会社及び上場準備会
社の決算・経理実務は今後も引き続き、目まぐるしく変化していきます。これ
らのエッセンスを、上場会社及び上場準備会社の経理担当者の皆さん向けに、
出来る限り分かりやすくお伝えします。何らかの「気づき」をご提供すること
が出来れば幸いです。仕事の合間に軽くどうぞ!

文中意見にわたる部分は私どもの私見にもとづきます。このメールマガジン
の情報をもとに実務に適用される場合には、監査法人さんや顧問税理士さん等
にご確認ください。もちろん、エキスパーツリンクでもまずは無料で検討させ
ていただきます。
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◆◇今週のCONTENTS◆◇
1.[税務]システムロスとは
2.[最新JGAAP]税効果新ルールの動向
3.[税務]法人実効税率20%台へ
4.[IFRS]高島屋が「59年の重荷」を背負う?
5.[NEWS]東芝の第三者委員会、格付け委員会が低評価
6.[編集後記]

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1.[税務]システムロスとは
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「当社は為替の影響もあり、親会社と海外子会社がともに赤字となってしまい
ました。移転価格上どのように対応したらいいでしょうか。」

グループ企業間で行われる一連の取引において、例えば日本の製造親会社と海
外の販売子会社のいずれの取引当事者も赤字状態になることを「システムロス」
といいます。

親会社と海外の子会社の双方で赤字が発生する原因として、以下のことが考え
られます。

・為替相場が大幅に変動した。
・海外子会社が設立間もないため、スタートアップ時のコストが回収できない。
・当初想定した販売数量の見込み違い、製造や販売にかかるコストが想定外に
増加してしまった。

このような原因により、日本の親会社と海外の子会社の双方で赤字が発生して
しまった場合、業界における慣例など、第三者間ではどのように取り扱われて
いるか、また移転価格分析における比較対象企業における取り扱いなども加味
したうえで、親会社及び子会社がそれぞれ負担している損失の額が妥当である
かの整合性をもって合理的に説明できるようにしておくことが重要です。例え
ば、親会社子会社双方で営業損失が発生している場合、その損失の発生要因の
定量化をはかったうえで、当該取引において発生した異常な損失を親会社子会
社双方の損益計算書から除外して移転価格を分析するといった方法が考えられ
ます。

利益を追求する企業としては、赤字の状態が続くのであればビジネスを継続す
る理由はなく、海外子会社の場合は進出先国からの撤退という選択を迫られる
はずであり、それでもビジネスを続ける理由は、そこに何らかの経営戦略があ
るはずです。そういった場合は移転価格の範疇ではなく、グループにおける経
営の問題になります。

長期に渡ってシステムロスが発生する場合、税務当局は移転価格の問題がある
のではないかと指摘する可能性があります。システムロスが発生した原因を十
分に把握し、当該理由を十分に説明できる資料を準備することが望ましいです。

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2.[最新JGAAP]税効果新ルールの動向
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ASBJで繰延税金資産の回収可能性ルールである監査委員会報告第 66 号「繰
延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」の見直し審議が行わ
れており、既に、企業会計基準適用指針公開草案第 54 号「繰延税金資産の回
収可能性に関する適用指針(案)」が公表されているわけですが、「適用初年
度の期首の影響額の取扱い」は、もめているみたいですね。

https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/minutes/20151120/20151120_20.pdf

この見直しにより、基本的には、繰延税金資産を多く計上できる場合がでてく
るため、資産計上することにより、損益が計上されるのか、期首利益剰余金を
変更するのか、もめています。

現状の整理は以下のとおりです。

「(1) 本公開草案では、監査委員会報告第 66 号に定められる繰延税金資産の
計上額を算定するための会計処理の原則及び手続を変更する内容を含ん
でおり、少なくとも当該部分は会計方針の変更として取り扱い、適用初
年度の期首の影響額について利益剰余金とすることが適切と考えられる。
(2) 一方で、本公開草案において、監査委員会報告第 66 号における考え方
を踏まえた上で取扱いをより明確に定めたものについては、従来の考え
方を改めるものではないと考えられることから、会計方針の変更には該
当しないものと整理してはどうか。
(3) この場合、監査上の取扱いを会計上の指針へと移管する今回の公開草案
の提案の内容が、監査委員会報告第 66 号における取扱いをより明確に
定めたものなのか、監査委員会報告第 66 号の定めの内容を実質的に変
更しているものなのかを詳細に検討することが困難であることについて、
一定の対応が必要と考えられる。」

これに対して、

「適用初年度の期首の影響額の全てを利益剰余金との意見と、全てを損益に反
映させるべきとの意見が聞かれた。」

ということです。そのほかにも様々な意見があるようです。

これについては、

見積のルールが変わる、ということであり、この見積のルールは会計方針なん
だから、会計方針の変更だ。

いやいや、そもそも見積はあくまで見積で、その計上額が変わることは当然に
見積の変更で、ルールが変更されたことに起因するとしても、見積の変更であ
るという性格を変えるものではない。

ということなんでしょうか。

細則主義であるがゆえにこういうことになるような気がします。

過去にさかのぼって修正するということで、私は、会計方針の変更というよ
り、過去の誤謬の訂正のような印象を受けます。過去の計上額が少なかったか
ら、過去を直すわけですから。

あくまで見積なのですから、過去を直さなくてもいいんじゃないでしょうか。
過去のルールは誤っていましたと言っているような気もします。

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3.[税務]法人実効税率20%台へ
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各種報道で皆さん既にご存知かと思いますが、法人実効税率が20%台になりそ
うです。

日経有料記事
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS27H6X_X21C15A1MM8000/

「財務・総務両省が27日、赤字企業も含めた外形標準課税を予定より4000
億円規模で増やし、実効税率引き下げの財源を確保する案で経団連と最終
調整に入った。首相官邸の指示をふまえ、法人税率の30%未満への引き下
げを従来の予定より1年前倒しする。」

とのことです。こう書かれていますから、事業税の話ですね。法人税率が下が
るわけではないのでしょう。地方税である事業税の所得割の税率がさがり、同
じ地方税である付加化価値割や資本割の税率があがるという話ですので、負担
の付け替えにすぎないという批判があります。

財源は、外形標準だけではないようです。以下の財源が検討されているようで
す。

「例えば生産性の高い設備に投資した企業への設備投資減税も縮小する。両省
は企業が購入した設備を分割して経費に計上する減価償却制度を見直す方針
も固めた。投資直後に計上する費用を大きくし法人税の支払いを圧縮できる
「定率法」の適用対象となる設備を減らす。エレベーターなどを定率法の対
象から外す方向だ。」

こっちは、法人税、地方法人税、住民税法人税割、事業税所得割、地方法人特
別税に影響する話のようです。

生産性向上設備投資促進税制が縮小されるということですが、現行の制度は
29/3まで取得分について定めたものですが、今後縮小されるということでしょ
うか。

減価償却は以前から定率法を廃止するという話が出ていましたが、一部を外す
んですね。エレベーターですか。

また税効果の税率が変わって大変ですね。

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4.[IFRS]高島屋が「59年の重荷」を背負う?
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IFRSのリース会計基準の最終案が、近々公表されるようです。

この基準では、オペレーティングリースの未経過リース料を貸借対照表に資産
としてリース物件の使用権利、負債としてリース料の支払い義務を計上させる
ことになったようです。2019年からの適用のようです。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/103000124/?P=1

「高島屋の場合、オペレーティングリース(将来の支払い義務を示す未経過リ
ース料、2015年2月期)は906億円と1年間で4倍強に拡大した。仮にIFRSを
適用して、これが全部負債に乗れば自己資本比率は計算上、38%程度まで押
し下げられる。しかも高島屋が1年以内に支払うリース料は15億円程度で、
仮にこの水準が続けば59年先までリース債務を背負い込んでいることになる。
高島屋は「会計基準の違いで企業の実態が霞まないように、株主には一層丁
寧に説明していきたい」(広報・IR室)という。」

これ、有価証券報告書で確認しました。オペレーティングリースの注記をみる
と、やはり、一年内1,534百万円、一年超89,101百万円、合計90,635百万円で
すね。90,635÷1,534は確かに59年です。

他にもニトリホールディングス、レオパレス21、良品計画、マクドナルド、
ANAホールディングス、商船三井が挙げられています。

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5.[NEWS] 東芝の第三者委員会、格付け委員会が低評価
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http://jp.reuters.com/article/2015/11/26/toshiba-report-idJPKBN0TF05M20151126

第三者委員会格付け委員会(格付け委:久保利英明委員長)は、26日、東芝の不
正会計に関する第三者委員会の調査結果を公表しています。

「委員8人のうち、4人が「C」、1人が「D」、3人が「F」と、総じて
低い評価だった。」とのことです。

格付け結果はこちら
http://www.rating-tpcr.net/result/#07

最も低い評価をつけた久保利委員長は、「第三者委のメンバーに、委員会発足
直前まで東芝のグループ会社との顧問契約を締結していた弁護士がいた点や、
公認会計士の一人が東芝と取引関係のあった監査法人に2014年まで在籍し
ていたことを指摘。「独立性に疑問がある」とし」ています。

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6.[編集後記]
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娘の学芸会に行ってきました。
「ユタと不思議な仲間たち」というお話でした。このお話は、東北の村に、東
京からやってきた転校生が、座敷わらしと出会い、影響を受け、だんだんと心
も体も強くなっていくという物語です。娘は座敷わらしの一人。受験もあるの
でセリフの少ない役を選んだとのことでしたが、主役と、東北の村の代表的な
生徒以外はみんな、セリフは少しずつでした。娘のセリフは、最初にユタに会
ったときに、その弱さをみて、「体も弱えし!」(だったかな?) と軽蔑した
ように吐き捨てるものでした。これがなかなかいいトーンで吐き捨ててくれた
ものですから、会場からは笑いが起きていました。まあ、普段から生意気な話
し方をしていますからね。ちょうどいいセリフでした。6年生ですから小学校
最後の学芸会でしたが、皆大きな声で一生懸命やっているのが伝わってきまし
た。最後にそろって舞台からおりてきて観客に向かって、ひとりひとりが報告
と感謝を述べたのはとても感動的で、体育館の後ろの出入り口まで歌いながら
そろって去っていくシーンは、皆随分と成長したんだな、うれしいやら、さみ
しいやら、いい学芸会でした。まわりのお母さんたちや女性の先生方は泣いて
いましたね。私はビデオ係。いいビデオとれました。

公認会計士紺野良一事務所のHPを作りましたので、是非ご覧ください。

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個人会計士による会社法監査
http://kaishaho-kansa.com/audit/personal/

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*発行人: エキスパーツリンク
 公認会計士・税理士・公認内部監査人(CIA) 紺野良一
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