【Weekly accounting journal】vol.304~代理人としての取引~
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇vol.304-2015.09.20
☆☆☆ Weekly Accounting Journal ☆☆☆
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こんにちは、エキスパーツリンクの紺野です。日本の会計基準は、今、IFRS
で揺れ動いています。一方で税制も改正されており、上場会社及び上場準備会
社の決算・経理実務は今後も引き続き、目まぐるしく変化していきます。これ
らのエッセンスを、上場会社及び上場準備会社の経理担当者の皆さん向けに、
出来る限り分かりやすくお伝えします。何らかの「気づき」をご提供すること
が出来れば幸いです。仕事の合間に軽くどうぞ!
文中意見にわたる部分は私どもの私見にもとづきます。このメールマガジン
の情報をもとに実務に適用される場合には、監査法人さんや顧問税理士さん等
にご確認ください。もちろん、エキスパーツリンクでもまずは無料で検討させ
ていただきます。
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◆◇今週のCONTENTS◆◇
1.[NEWS]期末在庫を増やすと利益が増える
2.[NEWS]会計監査の在り方に関する懇談会
3.[最新J-GAAP]収益計上~代理人としての取引~
4.[最新J-GAAP]のれんの動向
5.[編集後記]
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1.[NEWS]期末在庫を増やすと利益が増える
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東芝の不正会計事件に関して、半導体事業の不正会計の手法が雑誌記事になっ
ていますので、ご紹介します。
http://toyokeizai.net/articles/-/84683
要約を試みます。
(前提)
・半導体の製造工程は、前工程と後工程の二工程に分かれている。
・前工程で中間品在庫が発生、後工程で製品在庫が発生する。
・標準原価計算を行っているので、原価差額は前述の在庫と売上原価に配賦
される。
(不正会計の手法)
前工程の標準原価の改定だけを期の途中に実施し、標準原価改定をしていない
後工程で発生した原価差額を前工程にまで配賦した。前工程の製品はほとんど
が中間品在庫になるので、結果的に期末在庫金額が過大計上されたことになる。
(数値による解説)
記事にはより詳細に解説されていますが、
要は、
-標準原価改定前-
前工程 原価差額 100円(標準原価よりも多くコストがかかっている)
後工程 原価差額 100円(同上)
という状態でこれをそれぞれの工程に配賦すると、
前工程はほとんどが中間品在庫として資産計上されますが、
後工程は売上原価に計上されてしまう分が多く出てきます。
ここで、前工程の標準原価を改定します。改定することにより当然原価差額は
小さくなるはずです。現実に近づけるのが、改定の目的のはずなので。これに
より、以下のような状態になるはずです。
-標準原価改定後-
前工程 原価差額 0円(標準原価と実際原価が近くなっている)
後工程 原価差額 100円(標準原価よりも多くコストがかかっている)
このように原価差額が減っているのですが、これは後工程で発生しているもの
であって理論的には前工程に負担させるべきものではありません。
これをしれっと標準原価改定前と同様に、前工程と後工程に、配賦していたわ
けですね。それは確かに利益がでますね。
要は、発生した原価をなるべく在庫に計上するような工夫(これが「チャレン
ジ」なんですかね)がなされていたということですね。
標準原価を改定して実際に近づけているのであれば、原価差額はあまり出な
いはずですから、ここに他工程の原価差額を配賦すれば利益は出ますね。
そりゃ。
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2.[NEWS]会計監査の在り方に関する懇談会
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金融庁は、金融行政が何を目指すかを明確にするとともに、その実現に向け、
平成27事務年度においていかなる方針で金融行政を行っていくかを「金融行政
方針」として策定しています。
http://www.fsa.go.jp/news/27/20150918-1.html
この中で、
「金融行政の目指す姿・重点施策」として、
「1.活力ある資本市場と安定的な資産形成の実現、市場の公正性・透明性の
確保」など、6項目が挙げられています。
この1.のなかで、(2)市場の公正性・透明性の確保に向けた取組みの強化とし
て、「会計監査の質の向上」がうたわれています。引用します。
(ア)会計監査の信頼性の確保に向けた仕組み
a)会計監査のあり方に関する検討
今後の会計監査のあり方について、経済界、学者、公認会計士、アナリス
ト等関係各界の有識者から提言を得ることを目的として、「会計監査の在
り方に関する懇談会」を開催し、その提言等を踏まえ、会計監査の信頼性
の確保に向け、金融庁として必要な対応を行う。
b)監査法人等の適正な業務運営の確保
会計監査に対する市場の信頼を確保していくためには、監査法人や公認会
計士による適正な業務運営を確保していく必要がある。
このため、虚偽記載が認められる企業の財務書類について、故意に虚偽記
載がないものとして、又は、相当な注意を怠り重大な虚偽記載がないもの
として監査証明した監査法人や公認会計士に対しては、厳正に対応する。
また、公認会計士・監査審査会においては、監査法人等を取り巻く環境を
踏まえ、監査法人等のリスクに応じた効果的・効率的な審査・検査を実施
する。特に、適正な監査が行われなかった場合に市場に大きな影響を及ぼ
す企業の監査を行う監査法人等に対しては、検査のフォローアップの強化
等、そのリスクを踏まえた検査の実効性控除を図る。
品質管理や審査が不十分であり適正な業務運営が行われていないとして、
公認会計士・監査審査会から行政処分等の韓国があった監査法人や公認会
計士に対しては、その検査結果等を踏まえ、行政処分を行う等、厳正に対
応する。
c)日本公認会計士協会における会員の指導・監督
省略しますね
(イ)国際的な分野も含めた経済社会の幅広い領域で活躍出来る会計人材の確
保
省略しますね
「懇談会」で議論していただくのはいいのですが、日本独自の案の提言はな
かなか難しいのではないかなと思ったりもします。個人的には、監査人ばか
り悪者にするのではなく、被監査会社側に監査に誠実に向き合う態度を保持
することが当たり前だというような社会的雰囲気を醸成することが不可欠だ
と思います。被監査会社側の代表者とまでいかなくとも、少なくともCFOな
どに一定の研修を義務付けるなどの対応をしてもいいのではないでしょうか。
一方で、監査人の側でも、厳正さは失わずに、徒に経営を拘束するような対
応は慎む態度が必要だと思います。
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3.[最新J-GAAP]収益計上~代理人としての取引~
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ASBJは現在、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」を踏まえ、日本企
業に適する「収益認識」基準の開発を検討しています。
https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/minutes/20150911/20150911_index.shtml
いくつかの取引を取り上げ、検討されている内容から、私の独断と偏見で個別
論点をとりあげ、お伝えしていきたいと思います。
(百貨店・総合スーパー等のテナント売上及びいわゆる消化仕入(業種にかかわ
らず同様の取引を含む。)の表示方法)
会計制度委員会研究報告第13号我が国の収益認識に関する研究報告(中間報告)
がよくまとまっていますので一部引用します。
-具体的事例-
百貨店や総合スーパー等では、その店舗内に多数のテナントを誘致し、不動産
賃貸借契約に準じて一定の固定額又はテナント売上の一定割合等を賃料等とし
て収受している場合がある。このような取引について、賃料相当額のみを収益
として表示している場合が多いと考えられる。
また、百貨店や総合スーパー等には、テナントと商品売買契約を締結し、商品
が顧客へ販売されると同時にテナントから商品を仕入れる、いわゆる消化仕入
と呼ばれる取引形態がある。このような取引形態の中には、百貨店や総合スー
パー等がテナントで販売される商品の売買契約の当事者となっているものの、
テナントのマーチャンダイジング(MD)業務を主体的に担っているとは判断し
難いときや重要な在庫リスクを実質的に負担していないときがある。このよう
な取引について、商品販売高を総額で収益として表示している場合が少なくな
いと考えられる。
ASBJでは、以下のような意見が出ています。
・不動産賃貸借契約に準じた契約の多くはリース取引に該当すると考えられる
が、当該判断にあたっては IAS 第 17 号のリースの定義や IFRIC 第 4 号
に規定されるリース取引に該当する要件に照らして、個々の契約内容を斟酌
しなければならず、テナント料の形式により判断されるわけでないように思
われる。また、消化仕入に関しては、代理人と判断される場合が多いのでは
ないか。
・現行の実務では、あるブランドの販売店舗がファッション・ビルで営業する
場合には売上高に比例した変動賃料を支払い、当該ビルの運営企業は当該賃
料のみを純額で収益計上するが、百貨店で営業する場合には総額で収益計上
することが典型的と考えられる。これら 2つの取引は同様の経済実態にある
取引と思われ、財務諸表利用者にとって会計処理が統一されることが望まし
いと考えている。
などと言われています。消化仕入に係る売上計上は純額表示になるのは間違い
なさそうですね。
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4.[最新J-GAAP]のれんの動向
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ASBJは、最近、欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)及びイタリアの会計基準設
定主体(OIC)と共同で、ディスカッション・ペーパー(DP)「のれんはなお償却
しなくてもよいか-のれんの会計処理及び開示」及びこれに対するフィードバ
ック文書を公表しています。
このフィードバック文書とは、上述のDPに対して寄せられたコメントを取りま
とめ、概要を公表したものです。
これをおさらいしておきますが、
・コメント提出者の3分の2程度が「のれんの償却を再導入することが適切」と
いう見解に同意している。
・のれんの償却の再導入を支持するコメント提出者の多くが財務諸表作成者お
よび作成者の企業団体であったが、少数ではあるものの、財務諸表利用者の
一部ものれんの償却を支持している。
・財務諸表利用者の多く及び英国関係者等から、「減損のみのアプローチ」が
支持されている。
ということですね。IASBも「減損のみのアプローチ」についてレビューの対象
としていますので、将来的には、IFRSにおいても、のれんの償却及び減損に収
斂していくのではないでしょうか。
ちなみに、FASBにおいても、2001年に導入したのれんの「減損のみのアプロ
ーチ」について、2014年に非公開会社に対してのれんの償却処理を認めるよう
改正しており、公開会社等に対してものれんの償却を要求又は許容すべきかに
ついて審議が続けられています。
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5.[編集後記]
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安全保障法案が可決されたようですが、我が家では、来年の娘の中学受験の社
会で出題される可能性のある時事問題に敏感になっています。
今年は、終戦から70周年という節目の年であり、安倍首相のアメリカ議会で
の演説もありましたが、日本の戦前・戦中の歩みと戦後の復興など幅広く問わ
れる可能性があるようです。戦争から戦後復興って結構小学生が理解しきるに
は難しいことも多いですから、なかなか手強いなと戦々恐々です。当然今回の
安保法案可決にからめて集団的自衛権、憲法改正、平和主義、三権分立など、
考えられる範囲は非常に広いですよね。ISの関係も要注意ですよね。
また、明治日本の産業革命遺産が世界遺産に登録されましたので、これらと昨
年の富岡製糸場などをからめて近代工業化の過程などもおさえなければならな
いでしょうし。
これからもいろいろなことが起こるでしょうから、我が家ではなるべく時事問
題の話もするようにしています。
公認会計士紺野良一事務所のHPを作りましたので、是非ご覧ください。
トップページ
http://kaishaho-kansa.com/
個人会計士による会社法監査
http://kaishaho-kansa.com/audit/personal/
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*発行人: エキスパーツリンク
公認会計士・税理士・公認内部監査人(CIA) 紺野良一
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