【Weekly accounting journal】vol.294~資本金等の額と均等割と資本割~
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☆☆☆ Weekly Accounting Journal ☆☆☆
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こんにちは、エキスパーツリンクの紺野です。日本の会計基準は、今、IFRS
で揺れ動いています。一方で税制も改正されており、上場会社及び上場準備会
社の決算・経理実務は今後も引き続き、目まぐるしく変化していきます。これ
らのエッセンスを、上場会社及び上場準備会社の経理担当者の皆さん向けに、
出来る限り分かりやすくお伝えします。何らかの「気づき」をご提供すること
が出来れば幸いです。仕事の合間に軽くどうぞ!
文中意見にわたる部分は私どもの私見にもとづきます。このメールマガジン
の情報をもとに実務に適用される場合には、監査法人さんや顧問税理士さん等
にご確認ください。もちろん、エキスパーツリンクでもまずは無料で検討させ
ていただきます。
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◆◇今週のCONTENTS◆◇
1.[税務]実務上の取引価格と移転価格の違い
2.[最新J-GAAP&税務]事業税の税率変更とスケジューリング
3.[最新J-GAAP&税務]資本金等の額と均等割と資本割
4.[監査]会計監査及び内部統制監査と金融検査の連携について
5.[税務]本人に渡す支払調書にはマイナンバー記入しないでください
6.[編集後記]
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1.[税務]実務上の取引価格と移転価格の違い
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国際税務担当飯田の記事です。
移転価格の基本的な考え方は、海外子会社との取引に係る所得を親会社と子
会社の果たす機能および負っているリスクに基づいて、適切に配分することに
あります。
原価プラスマークアップ、営業利益率など、どの移転価格算定方法を採用し
たかに関わらず、経済環境、市場の状況などは常に変化しているため、移転価
格については定期的な見直しが必要です。
たとえば、日本の親会社が海外子会社へ棚卸資産を輸出する際、その取引価
格の算定にあたっては実務上、製造原価や調達原価にどの程度マークアップす
べきかという分析をすると思います。このようなことから、移転価格の算定方
法として、例えば製造業であれば原価基準法が適切な方法であると考えること
が多いようです。しかし、現実的には会社の事業計画において、海外子会社の
業績についても分析を行い、着地点である営業利益率がどの程度の水準になる
かを検討されているのではないかと思います。
一方、移転価格税制における独立企業間価格の選定方法は、法令で定められ
方法に従うことになりますが、その際に比較可能な取引が存在するかを確認す
ることが重要です。実務上の考え方で原価基準法を採用しようとしても、比較
対象となる取引がなければその方法を採用することはできないからです。
移転価格のポリシー構築とは、単に実務上の取引方法に最も近い算定方法を
探すことではなく、取引実態と移転価格の理論に照らし合わせて、所得が適切
に配分できるような移転価格算定方法を選定し、それを遵守するためにグルー
プ内でのルール作りを進めることです。
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2.[最新J-GAAP&税務]事業税の税率変更とスケジューリング
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3月決算の会社さんはもう第1四半期の決算にとりかかっているところではな
いでしょうか。
四半期の税金及び税効果計算にあたって、原則法でも簡便法でも、将来の課税
所得の見積が必要になります。この際には、税制改正の影響も考慮していく必
要があるはずです。
ここでは、特に外形標準課税適用法人の事業税についておさらいしておきたい
と思います。
外形標準適用課税適用法人においては、事業税の税率が変更されています。標
準税率ですが、以下のような動きになります。
平成27年4月1日から平成28年3月31日までに開始する事業年度
付加価値割 0.72%
資本割 0.3 %
所得割 3.1 %
地方法人特別税 93.5 %
平成28年4月1日以後に開始する事業年度
付加価値割 0.96%
資本割 0.4 %
所得割 1.9 %
地方法人特別税 152.6 %
さらに、どこまで厳密にやるかという問題もありますが、事業税は負担軽減措
置があります。
適用時期;
平成27年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始する事業年度
軽減措置;
(付加価値額30億円以下)
(新税率による法人事業税額-旧税率による法人事業税額)×1/2
(付加価値額30億円超40億円未満)
(新税率による法人事業税額-旧税率による法人事業税額)
×(40億円-当期の付加価値額)/20億円
ここで、
旧税率による法人事業税額は、
27年度であれば
当年度の付加価値額、資本金等の額、所得にそれぞれ、平成27年3月
31日現在の規定による税率を乗じた金額の合計額
28年度であれば
当年度の付加価値額、資本金等の額、所得にそれぞれ、平成28年3月
31日現在の規定による税率を乗じた金額の合計額
ということになります。
個人的に疑問なのは、これらの負担軽減措置は事業税全体でみた場合の増加額
を圧縮してくれるというものであって、事業税の、所得割、付加価値割、資本
割がどう変動したという明細があるわけではないようだということです。この
圧縮額のPL計上区分は、販管費なのか法人税等なのか。
増加を軽減するわけですから、税率の上がっている付加価値割と資本割の軽減
なのだということで全部販管費でいいように思いますが、いかがでしょう。
また、気をつけたいのは、「平成27年3月31日現在の税率」です。これは、地
方法人税の導入に伴い、変更された「平成26年10月1日以後開始事業年度に
適用される税率」のことをいいます。例えば3月決算の会社ではこの税率を
用いて一度も申告はしていないことになりますが、この税率が「旧税率」と
いうことになりますのでご注意ください
あと、外形標準にも所得拡大促進税制が適用されていますよね。こちらは通常
多額にはならないものと思われますが、重要性がでそうなら検討されたほうが
よいのかもしれません。
さらに、資本割については、以下、3に記載した変更もありますので、ご注意
ください。
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3.[最新J-GAAP&税務]資本金等の額と均等割と資本割
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平成27年税制改正のうち、資本金等と均等割、資本割の関係をおさらいした
いと思います。
資本金等に関する改正の概要は以下のとおりでした。
(加減算規定)
法人住民税均等割の税率区分の基準となる額は、法人税法第2条第16号に規
定する資本金等の額に対して(1)を加算して、(2)を減算します。
(1) 無償増資
平成22年4月1日以後に行った利益準備金又はその他利益剰余金によ
る無償増資
(2) 無償減資等による欠損(損失)てん補
・平成13年4月1日から平成18年4月30日までの間に、減資(金銭
その他の資産を交付したものを除く)による欠損のてん補を行った額、
及び資本準備金による欠損のてん補に充てた額
・平成18年5月1日以後に、剰余金による損失のてん補を行った場合、
損失のてん補に充てた額
ただし、資本金の額または資本準備金の額を減少し、その他資本剰余金
として計上してから1年以内に損失のてん補に充てた金額に限る
これにより事業税外形標準の資本割の課税標準と同様の規定になりました。
(下限の設定)
「資本金等の額」が「資本金と資本準備金の合計額」を下回る場合、「資本金
と資本準備金」が基準となることになりました。
これは、均等割だけの話ではなく、外形標準課税の資本割の課税標準となる資
本金等の額についても同様の改正が行われています。
これにより
・均等割の税率区分が変わってくる可能性があります。
・資本割の課税標準の額が変わってくる可能性があります。
(加減算規定)については、過去に欠損てん補を行っている会社さんは、従来は
均等割と資本割とで標準が異なっていたわけですが、これにより揃うことにな
りますのでご注意ください。
(下限の設定)については、ご確認ください。例えば、資本金と資本準備金しか
ない状況で自己株式を所有している場合などが該当するものと思われますので、
ご注意ください。む
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4.[監査]会計監査及び内部統制監査と金融検査の連携について
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金融庁検査局から日本公認会計士協会宛てに
「会計監査及び内部統制監査と金融検査の連携について(要請)」
という文書が寄せられているようでして、これを受けて、日本公認会計士協会
から、
「金融庁検査局からの「会計監査及び内部統制監査と金融検査の連携について
(要請)」に関して」
というお知らせが出ています。
http://www.hp.jicpa.or.jp/ippan/jicpa_pr/news/post_1968.html
要は、
「金融検査の立入検査中以外の期間においても必要に応じて、金融機関の会計
監査人と双方向で意見交換を行う」
ということですね。
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5.[税務]本人に渡す支払調書にはマイナンバー記入しないでください
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マイナンバー対応の検討は進んでますでしょうか。
企業が個人の事業主に対して支払う「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」
についてですが、1点、認識を新たにしたものがありましたのでお伝えしてお
きます。
税務署に提出するものについては、マイナンバーを記載します
が、
本人に交付するものには、マイナンバーを記載してはいけません
あれ、本人には交付する必要ないんですよね。提出義務のないものにマイナン
バーを記載してはいけないようです。
本人に出すわけですけどね。ご確認ください。
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6.[編集後記]
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東芝の不適切会計の問題で社長が辞任する方向のようです。
担当の監査法人の社員は監査法人内でも品質管理の重要なポストについている
方のようですね(公知の情報をもとにしたものです)。だとすると、他のパート
ナーが担当する監査は厳しくチェックする立場にありながら、自分のクライア
ントは厳しく監査できてなかったと言われても仕方ない状況ですね。残念なが
ら。監査はもう限界があるということにならないでしょうか。クライアントか
ら報酬を得て、短時間で行わなければならないという今のシステム自体に、や
はり、無理があるんじゃないですか。監査法人で無傷なところなどありません。
潜在的に大きな爆弾を抱えているところもあるかもしれません。
公認会計士紺野良一事務所のHPを作りましたので、是非ご覧ください。
トップページ
http://kaishaho-kansa.com/
個人会計士による会社法監査
http://kaishaho-kansa.com/audit/personal/
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*発行人: エキスパーツリンク
公認会計士・税理士・公認内部監査人(CIA) 紺野良一
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