【Weekly accounting journal】vol.293~移転価格ポリシー構築のプロセス~
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇vol.293-2015.07.05
☆☆☆ Weekly Accounting Journal ☆☆☆
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こんにちは、エキスパーツリンクの紺野です。日本の会計基準は、今、IFRS
で揺れ動いています。一方で税制も改正されており、上場会社及び上場準備会
社の決算・経理実務は今後も引き続き、目まぐるしく変化していきます。これ
らのエッセンスを、上場会社及び上場準備会社の経理担当者の皆さん向けに、
出来る限り分かりやすくお伝えします。何らかの「気づき」をご提供すること
が出来れば幸いです。仕事の合間に軽くどうぞ!
文中意見にわたる部分は私どもの私見にもとづきます。このメールマガジン
の情報をもとに実務に適用される場合には、監査法人さんや顧問税理士さん等
にご確認ください。もちろん、エキスパーツリンクでもまずは無料で検討させ
ていただきます。
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◆◇今週のCONTENTS◆◇
1.[税務]移転価格ポリシー構築のプロセス
2.[最新J-GAAP]繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(案)のおさらい
3.[NEWS]オリンパス実行犯有罪判決
4.[最新J-GAAP&税務]東京都の超過税率(28年度分)公布
5.[最新J-GAAP]JMISの公表
6.[NEWS]日本再興戦略閣議決定
7.[編集後記]
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1.[税務]移転価格ポリシー構築のプロセス
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国際税務担当飯田の記事です。
移転価格ポリシーの構築は、現状の把握から始めます。有償、無償に関わら
ず、グループ内で行われている取引をすべて洗い出し、それらの取引を棚卸
資産、無形資産、役務提供、金融、その他の取引に分類します。この段階で、
一つの取引を製品別や種類別に細分化することや、種類が異なる取引でも相
互に密接に関係している場合には、取引をまとめることもあります。
そして、各取引の価格設定に関与している部署に対して、実際どのように取
引価格を設定し、取引価格の改定はどのように行われるのかについて把握し
ます。また、洗い出された取引それぞれに関与しているグループ会社がどの
ような役割を果たし、どのようなリスクを負っているかを把握します。
次の段階で、OECD移転価格ガイドライン、我が国の移転価格税制に関連する
法令や通達、各子会社が所在する国における移転価格税制の法令などから、
取引の種類ごとに移転価格算定方法を決定します。
移転価格の算定方法は取引の価格、粗利益、営業利益を算定する方法があり
ます。このうち、営業利益を選択した場合は、独立企業間価格レンジ内にあ
る利益水準指標から目標利益率を決定し、それに基づいて移転価格を算定し
ます。取引が市場参入の初期段階にある場合など、特殊な事情がある場合は、
事前に例外措置の具体的内容を決めておく必要があります。
最後に、移転価格ポリシーの運用規定を決定します。ポリシーの適用開始日、
情報更新のタイミング、ポリシーの改定が必要となる事実の特定、ポリシー
遵守を検証する手続き、社内における移転価格の担当窓口等を事前に決めて
おきます。
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2.[最新J-GAAP]繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(案)のおさらい
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おさらいしましょう。
「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(案)」が平成27年5月26日に
公表されています。
https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/documents/exposure_draft/zeikouka2015/
字句の見直しなどもありますが、とりあえずおさえておくべきポイントは、
会社区分の判断基準の見直し
がなされているということです。
ポイントは以下です。なるべく平易な言葉で簡潔に書きたいため、正確性を欠
く場合があるかもしれませんが、まずは入門編ということでご了承ください。
詳細は原典にあたってください。
○従来基準で(分類2;スケジューリング可能で回収可能なものは積める)
→スケジューリング不能な将来減算一時差異のうち、具体的なスケジューリ
ングはできないが、いずれかの時点で回収できることを合理的に説明でき
る場合、積めるようになります(上記適用指針(案)21項但書)。
→→減損済みの有価証券などがこれにより繰延税金資産を積めるようになる
ものもあるかもしれません。
○従来基準で(分類3;5年以内スケジューリング可能で回収可能なものは積める)
→5年を超える期間でもスケジューリング可能で回収可能なものは積めるよう
になります(上記適用指針(案)24項)。
→→5年を超える長期のものというと退職給付引当金や固定資産の償却超
過でしょうけれども、いずれも従来基準でも分類3の場合は、5年を超
えるものも計上していました。ただし、減損損失を計上した固定資産
に係る償却超過額で5年を超えるものが積めるようになるかもしれませ
んね。
○従来基準で(分類4但書;5年以内スケジューリング可能で回収可能なもの
は積める)
→5年超にわたり一時差異等加減算前課税所得が安定的に生じることが合理
的に説明できるときは、分類2に該当することになります。(上記適用指針
(案)28項)。
→→上述分類3と基本的に同様なのですが、従来基準で分類4但書というと、
繰越欠損金があるわけで、これが、5年を超えて積めるようになるかもし
れないということですね。
また、
○従来基準で(分類4本文;翌年スケジューリング可能で回収可能なものは積
める)
→おおむね3年から5年程度は一時差異等加減算前課税所得が生じること
が合理的に説明できるときは、分類3に該当することになります。(上記
適用指針(案)29項)。
→→1年分しか積めなかったものが3年から5年程度分積めるようになるわ
けです。
分類5に該当してしまうと、繰延税金資産は計上できないのは従来通りです。
というわけで、分類2~4に該当する会社さんはいずれも繰延税金資産を追加
計上できる可能性が出てくるわけです。ご留意ください。
適用時期は、ちょっと長いですけど引用しておきます。基本的には翌期から
ですが、早期適用も可能ですからね。ご留意ください。
(1) 平成28 年4 月1 日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首か
ら適用する。ただし、平成28 年3 月31 日以後終了する連結会計年度及
び事業年度の年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用する
ことができる。
(2) (1)ただし書きの適用にあたって、早期適用した連結会計年度及び事業
年度の翌年度に係る四半期連結財務諸表及び四半期個別財務諸表におい
ては、早期適用した連結会計年度及び事業年度の四半期連結財務諸表及
び四半期個別財務諸表について本適用指針を当該年度の期首に遡って適
用する。
(3) 本適用指針の適用初年度においては、会計基準等の改正に伴う会計方針
の変更として取り扱う。
(4) 本適用指針の適用初年度においては、当該年度の期首時点で新たな会計
方針を適用した場合の繰延税金資産及び繰延税金負債の額と、前年度末
の繰延税金資産及び繰延税金負債の額との差額を、適用初年度の期首の
利益剰余金に加減する。ただし、資産又は負債の評価替えにより生じた
評価差額等をその他の包括利益で認識した上で純資産の部のその他の包
括利益累計額に計上する場合又は直接純資産の部の評価・換算差額等に
計上する場合、適用初年度の期首時点で新たな会計方針を適用した場合
の繰延税金資産及び繰延税金負債の額と、前年度末の繰延税金資産及び
繰延税金負債の額との差額を、適用初年度の期首のその他の包括利益累
計額又は評価・換算差額等に加減する。
(5) 本適用指針の適用初年度においては、会計基準等の改正に伴う会計方針
の変更による影響額の注記について、企業会計基準第24 号「会計上の変
更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(以下「企業会計基準第24 号」と
いう。)第10 項(5)ただし書きの定めにかかわらず、適用初年度の期首
の繰延税金資産に対する影響額、利益剰余金に対する影響額、及びその他
の包括利益累計額又は評価・換算差額等に対する影響額を注記する。
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3.[NEWS]オリンパス実行犯有罪判決
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オリンパス粉飾の指南役に実刑判決がでましたね。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG01H41_R00C15A7CC0000/
野村証券OB 投資関連会社社長 58歳
懲役4年、罰金1千万円
元会社役員 52歳
懲役3年、罰金600万円
O被告 53歳
懲役2年、執行猶予4年、罰金400万円
この三人には約8億8300万円の追徴金が課せられるようです。
受取報酬は、この三人で81億円だったはずです。これくらいでいいんでしょ
うか。
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4.[最新J-GAAP&税務]東京都の超過税率(28年度分)公布
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平成27年7月1日、とうとう東京都の外形標準課税法人にかかわる法人事業税
の税率の改正が公布されました。
http://www.tax.metro.tokyo.jp/kazei/pdf/zeiritsukaisei.pdf
これからはこちらを使用することになりますね。過去において、これとは異な
る推定税率を使用されたところは修正が必要になりますね。
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5.[最新J-GAAP]JMISの公表
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JMIS(ジェイミスというみたいですね)、すなわち、「修正国際基準(国際会計
基準と企業会計基準委員会による修正会計基準によって構成される会計基準)」
が平成27年6月30日、公表されたようです。
企業会計基準委員会による修正会計基準第1号「のれんの会計処理」
企業会計基準委員会による修正会計基準第2号「その他の包括利益の会計処理」
の二つです。要は、上記二点を除きIFRSを適用するということになります。
適用時期は、以下のとおりです。
修正国際基準は、2016 年3 月31 日以後終了する連結会計年度に係る連結財
務諸表から適用することができる。四半期連結財務諸表に関しては、2016
年4 月1 日以後開始する連結会計年度に係る四半期連結財務諸表から修正国
際基準を適用することができる。
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6.[NEWS]日本再興戦略閣議決定
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前回ご紹介した日本再興戦略が平成27年6月30日、閣議決定されています。
http://www.kantei.go.jp/jp/headline/seicho_senryaku2013.html#c16
法人税税率引き下げは確実なものになりそうですね。
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7.[編集後記]
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ギリシャの国民投票がもうすぐ開始します。
感覚的には、金借りたら返せ、なわけですけど、ことはそう簡単ではないよう
ですね。ギリシャはドイツに約36兆円の戦時賠償金の請求をしています。ドイ
ツとしては、1960年に戦時賠償金として1億1500万マルクを支払っているよう
ですので、これで解決済みということなんでしょう。私もつい最近までそう考
えていましたが、1942年にヒトラーのドイツはギリシャ中央銀行から4億7600
万マルクの資金を強制的に借り入れているようです。これは現在価格で80億
から110億ユーロに相当するようです。こういったことを考えるとある程度の
請求権はギリシャにあるように思えてきます。
戦争は絶対にしてはいけませんね。禍根を完全に精算することは不可能です。
公認会計士紺野良一事務所のHPを作りましたので、是非ご覧ください。
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個人会計士による会社法監査
http://kaishaho-kansa.com/audit/personal/
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*発行人: エキスパーツリンク
公認会計士・税理士・公認内部監査人(CIA) 紺野良一
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