【Weekly accounting journal】vol.176~過年度遡及と重要性~
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇vol.176-2013.03.19
☆☆☆ Weekly Accounting Journal ☆☆☆
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
こんにちは、エキスパーツリンク/エキスパーツ税理士法人の紺野です。日本
の会計基準は、今、IFRSで揺れ動いています。一方で税制も改正されており、
上場会社及び上場準備会社の決算・経理実務は今後も引き続き、目まぐるしく
変化していきます。これらのエッセンスを、上場会社及び上場準備会社の経理
担当者の皆さん向けに、出来る限り分かりやすくお伝えします。仕事の合間に
軽くどうぞ!
文中意見にわたる部分は僕の私見にもとづきます。このメールマガジンの情報
をもとに実務に適用される場合には、監査法人さんや顧問税理士さん等にご確
認ください。もちろん、エキスパーツリンク/エキスパーツ税理士法人でもま
ずは無料で検討させていただきます。
********************************************************************
【上場会社・上場準備会社グループ経営支援】
エキスパーツリンク/エキスパーツ税理士法人は「監査人ではない」会計・
税務専門家として、会社側の視点にたった各種支援を行っています。
◎監査人ではない会計・税務専門家に相談したい等
→経営企画・CFO支援
http://www.expertslink.jp/managementsupport/advice/
◎決算・開示・税務業務の一部を専門家に外注したい等
→決算・開示サポート
http://www.expertslink.jp/managementsupport/finalaccounts/
◎担当者の実力の底上げを図りたい等
→社内勉強会・研修会
http://www.expertslink.jp/managementsupport/study/
◎問題の多い子会社を監査して適切な財務諸表を作り上げて欲しい等
→任意監査
http://www.expertslink.jp/managementsupport/audit/
◎税務顧問の変更をお考えなら
→エキスパーツ税理士法人
http://expertslink-tax.jp/
ご意見、ご質問はこちらまで
info@expertslink.jp
********************************************************************
◆◇今週のCONTENTS◆◇
1.[最新J-GAAP]過年度遡及で重要性はどう判断するか。
2.[監査]企業特有の情報を監査報告書に。
3.[監査]会計監査受けなかったらどうなる?
4.[税務]問題88
5.[編集後記]
===================================
1.[最新J-GAAP]過年度遡及で重要性はどう判断するか。
===================================
監査で虚偽表示が発見されたとします。
この虚偽表示が当年度の財務諸表に与える影響に重要性がなければ修正に至ら
ずとも認めてもらえることがあります。このため、この重要性を評価すること
になるわけです。
この評価の方法としては、一般的には、
(1)未修正の虚偽表示の発生年度に係らず、当年度末時点の貸借対照表に存在
する未修正の虚偽表示の累積的影響を検討する方法―アイアン・カーテン
方式
(2)過年度の未修正の虚偽表示が当年度数値において修正又は解消されたこと
による影響(振戻し効果)を考慮した上で、当年度の損益計算書に存在する
未修正の虚偽表示の影響を検討する方法―ロールオーバー方式
(3)両者について考慮した上で評価する方法
があると言われています。
これらの評価方法のうち、まずはアイアン・カーテン方式により評価すべき
ことになります。
例えば、減価償却費の計上が当年度を含む過去5年間で100ずつもれていたと
します。この場合、当該虚偽表示が当期損益に与える累積的影響額は500で
あり、当年度に与える100のみを考慮するわけではないということです。
ただし、アイアン・カーテンのみ考慮すればよいということではありません。
過年度遡及会計基準の適用下では、従来の前期損益修正項目として当年度の
損益計算書に計上する方法が認められなくなっています。
すなわち、過去の誤謬を修正又は解消することによる当期損益への影響は当
年度の損益計算書の比較可能性に及ぼす影響としてとらえることとなり、前
年度末の未修正の虚偽表示の影響を評価することが必要なためです。
つまり、前期に計上すべき売上が当期に入ってしまったというような場合は、
アイアン・カーテンのみ考慮すれば影響はなくなっているわけですが、ロー
ル・オーバーの視点からして前期計上すべき損益が当期に計上されているこ
とが財務諸表に与えている影響を考慮する必要があるということになるわけ
です。
考えてみれば当たり前なのですが、上記のように考え方が整理されています
ので、ご留意ください。
===================================
2.[監査]企業特有の情報を監査報告書に。
===================================
株価もリーマン・ショック前に戻ってきました。しかしながら、今回の金融危
機は世界的に非常に大きな影響をもたらしました。
ここで私たち会計士による監査はどう機能したのか。金融危機の発生に対する
何等かの防止、緩和は出来なかったのか。という反省が私たちの業界でもなさ
れています。
英国では、下院の財務委員会が、長い調査の結果、「監査の失敗があったこと
についての十分な証拠は得られなかった」と結論づけたそうです。
ということはですよ。監査人は頑張ってちゃんと仕事をしました。でも、金融
危機は未曽有の規模で起きてしまいました。ということになり、私たち監査人
は役に立っていなかったということでもあるのです。
ここから、「監査報告書の改善」という発想が生まれてきているようです。
学術研究の結果、利用者から、監査人にもっと情報を提供してほしいという大
きな要望があることがわかったのです。
この要望を受けて国際監査・保証基準審議会では、監査報告書にどのような情
報を提示すべきなのか、検討を始めています。
例えばどんな情報なのでしょうか。国際監査・保証基準審議会議長Arnold
Schilder氏のコメントを引用すると、
「例えば、あなたが投資家として、財務諸表で最も重要な項目は何かと監査人
である私に聞いたとします。私は棚卸資産だと答え、監査人によるコメントで、
棚卸資産の評価については年次報告書の何頁を読めばいいのかあなたに伝える
ことができるかもしれません。」
ということです。これは画期的なことです。監査人に与えられる責務はより大き
なものになります。現行の監査報告書には、標準的な文言が書かれていて会社名
と日付以外は基本的に同じ文言ですが、監査人による付加的な情報が与えられる
のだとすると、会社ごとに大きく異なる監査報告書が世に出回る時代がくるとい
うことになるのかもしれません。
「現状維持は選択肢にない」とのことです。この議論の推移、見守りたいと思い
ます。
個人的には監査が面白くなるのではないかと考えています。どこどこの監査法人
の○○パートナーの監査報告書は非常に有益な情報を与えてくれる、みたいな評
価がなされるようになるのかもしれません。
以上は会計・監査ジャーナル2013年1月号の記事に基づいています。
===================================
3.[監査]会計監査受けなかったらどうなる?
===================================
これは重要な問題だと思います。筑波大学ビジネス価額研究科教授弥永真生氏
による会計・監査ジャーナル2012年12月号への寄稿に基づいて記載します。
会社法上、会計監査人の選任を怠ったとしても、百万円以下の過料に処せられ
るだけです(会社法第976条第22号)
監査報酬払うより安いですね。これは。
また、現行の会社法のもとでは、会計監査人の無限定適正意見が表明されてい
ないことが計算書類の承認決議の無効を直ちにもたらすものではないといわれ
ています。
以下、引用です。
「会計監査人の監査を受けなければならない会社が会計監査人の監査を受けて
いない場合に、計算書類の承認決議の無効を直ちにもたらすかについては必ず
しも定説はない。計算書類等の備置きがなされていなかったことや定時株主総
会の招集に際して提供されなかったことは、株主総会における承認決議の取消
事由にあたるというのが下級審裁判例のとる立場であり、学説上も少なくとも
多数説であると思われることからは、受けるべき会計監査人監査を受けていな
いことは、株主総会における計算書類承認決議の取消事由にあたると考えるの
が自然であるようにも思われる。他方、意見不表明の場合については、そのこ
とが、直ちに計算書類の承認決議無効をもたらすわけではないというのが立案
担当者の考えではないかとも思われる(会社計算規則130条3項参照)。このこと
からすれば、会計監査人の監査を受けなければならない会社が会計監査人の監
査を受けていないことが、計算書類の承認決議の無効を直ちにもたらすわけで
はないとも考えられる。」
つまり、誰かがチェックしているわけでもないし、誰かが総会決議取消の訴え
でも起こさない限り、受けなくても大して問題にもならない。ということです
ね。
これは日本社会において会計監査に対する期待が小さいものであると考えられ
ていることの表れではないでしょうか。
これでは非上場の会社などは受けなくてもいっか。という考えになってしまう
かもしれません。
上場会社であれば100%会計監査は受けているはずですが、非上場の会社では会
社法上必要性がありながら、会計監査を受けていない会社は実は結構あるので
はないでしょうか。
===================================
4.[税務]問題88
===================================
[問88]
法人が入会するゴルフクラブに対して支出した入会金について、税務上正しい
のはどれ?ただし、その法人の役員が個人会員として入会するものとします。
[答]
a.無条件に資産計上する必要がある。
http://clap.mag2.com/hesouwraga?a
b.無条件に個人会員たる役員に対する給与とする必要がある。
http://clap.mag2.com/hesouwraga?b
c.基本的に個人会員たる役員に対する給与となるが、資産計上することが認め
られる場合もある。
http://clap.mag2.com/hesouwraga?c
[前回の解答]
前回の正答はbです。
===================================
5.[編集後記]
===================================
毎年毎年1月から3月は何かと追われます。年末調整、法定調書、なぜか私たち
の事務所に多い11月12月の法人決算、個人の確定申告。3月15日で確定申告が
終わっても還付なのでということで依頼がパラパラ来てみたり。ここまでは当
然業務なのでうれしい悲鳴なのですが、あと厄介なのは、CPEです。CPEとは継
続的専門研修制度といって、私たち公認会計士は、当該終了した事業年度を
含む直前3事業年度合計120以上の研修単位を取得しなければなりません。私
は現時点で117単位なのであと3単位3月末までに取得しなければなりません。
足りなくなると会計・監査ジャーナルという専門誌にCPE指定記事というもの
が掲載されていますので、これを必死に読んで単位を稼ぎます。監査業務従事
者は必修の単位があったりします。まあ、あと3単位なので大丈夫だと思いま
すが、ここまでくるのも結構大変でした。早く3月終わらないかな。花粉もき
ついし。と思う今日この頃です。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
*発行人: エキスパーツリンク
公認会計士・税理士・公認内部監査人(CIA) 紺野良一
*URL: http://www.expertslink.jp
→決算・開示サポート、内部統制、会計に強い税理士をお求めならこちら
*E-mail: <info@expertslink.jp>
転送はご自由に!
*解除はこちらから
→ http://www.expertslink.jp/mailmagazine/
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~