【Weekly accounting journal】vol.276~社外取締役~
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇vol.276-2015.03.05
☆☆☆ Weekly Accounting Journal ☆☆☆
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こんにちは、エキスパーツリンクの紺野です。日本の会計基準は、今、IFRS
で揺れ動いています。一方で税制も改正されており、上場会社及び上場準備会
社の決算・経理実務は今後も引き続き、目まぐるしく変化していきます。これ
らのエッセンスを、上場会社及び上場準備会社の経理担当者の皆さん向けに、
出来る限り分かりやすくお伝えします。仕事の合間に軽くどうぞ!
文中意見にわたる部分は僕の私見にもとづきます。このメールマガジンの情報
をもとに実務に適用される場合には、監査法人さんや顧問税理士さん等にご確
認ください。もちろん、エキスパーツリンクでもまずは無料で検討させていた
だきます。
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◆◇今週のCONTENTS◆◇
1.[税務]国際税務入門4
2.[法務]社外取締役についてのおさらい
3.[NEWS]社外取締役は会計士の救済策なの?
4.[編集後記]
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1.[税務]国際税務入門4
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外国子会社からの資金回収・・・配当
日本の親会社が海外子会社から投資資金を回収する際、大きく分けて配当、利
子、ロイヤルティという3つの選択肢があげられます。今回は配当についての
取り扱いを見ていくことにします。
OECDモデル租税条約第10条では、配当を支払人の居住地国においても受取人
の居住地国においても課税される旨が定められています。税率は一般の配当に
ついては15%、議決権の25%以上かつ6か月以上を保有する法人からの配当は
5%に軽減されています。
外国子会社からの配当については、通常その支払時に現地国で源泉税が課され
ることになりますが、米国やシンガポールなど、支払配当に対する源泉税を課
さない国がありますので、こうした国からの配当による資金回収はより効果的
と言えます。
以下は日本とアジア諸国との租税条約における源泉徴収税率(親子間配当)で
す。
インドネシア・・・10%
中国 ・・・10%
タイ ・・・10%
韓国 ・・・5%
マレーシア・・・0%
ベトナム ・・・0%
香港 ・・・0%
ただし、外国子会社益金不算入制度の対象となる配当については、この源泉税
が直接外国税額控除の対象とはならないため注意が必要です。したがって、外
国子会社からの配当が日本の法人税段階で非課税とされる場合であっても、現
地国で高率の源泉徴収がされる場合には、利子やロイヤルティで回収する場合
に比べて不利な結果となる場合もあります。これは、配当と違い、利子やロイ
ヤルティは日本で外国税額控除の対象となるからです。
配当による資金回収は、現地国で課される源泉税がコストとなりますので、こ
れをいかに軽減できるかが重要になります。
次回は利子について取り上げます。
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2.[法務]社外取締役についてのおさらい
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新会社法の施行日は平成27年5月1日です。
事業年度の末日において監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社
であるものに限る。)であって有価証券報告書を提出しなければならない会社
さんでは、社外取締役について、選任するのか、選任しないで、社外取締役を
置くことが相当でない、として説明等することにするのか、検討はお済でしょ
うか?
いま社外取締役がいないという会社さんだけでなく、社外取締役はいるとい
う会社さんも、新会社法により社外取締役の要件を満たさなくなる可能性があ
りますのでご注意ください。
新会社法での社外取締役の要件は以下のとおりです。
社外取締役
「株式会社の取締役であって、次に掲げる要件のいずれにも該当するものをい
う。
イ 当該株式会社又はその子会社の
業務執行取締役、執行役、支配人その他の使用人でなく、
かつ、
その就任の前十年間
当該株式会社又はその子会社の
業務執行取締役等であったことがないこと。
ロ その就任の前十年内のいずれかの時において
当該株式会社又はその子会社の
取締役、会計参与、又は監査役であったことがある者(業務執行取締役
等であったことがあるものを除く。)にあっては、
当該取締役、会計参与又は監査役への就任の前十年間当該株式会社又は
その子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。
ハ 当該株式会社の親会社等(自然人であるものに限る。)又は親会社等の
取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の使用人でないこと。
ニ 当該株式会社の親会社等の子会社等(当該株式会社及びその子会社を除
く。)の業務執行取締役等でないこと。
ホ 当該株式会社の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の重要な使
用人又は親会社等(自然人であるものに限る。)の配偶者又は二親等内
の親族でないこと。」
これにより、親会社等の取締役等、兄弟会社の取締役等、取締役等の一定の
親族については、「社外」とは認められなくなります。
で、社外取締役がいないということになった場合ですが、以下3点にご注意
ください。
(1) 株主総会での社外取締役を置くことが相当でない理由の説明
(2) 株主総会参考書類での社外取締役を置くことが相当でない理由の記載義
務
(3) 事業報告での社外取締役を置くことが相当でない理由の記載義務
まず、(1)ですが、
「事業年度の末日において監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会
社であるものに限る。)であって金融商品取引法第二十四条第一項の規定によ
りその発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければ
ならないものが社外取締役を置いていない場合には、取締役は、当該事業年度
に関する定時株主総会において、社外取締役を置くことが相当でない理由を説
明しなければならない。」
とされています。「事業年度末日において」ですからね。5月1日以降に総
会を行う場合で、「事業年度末日において」社外取締役をおいていない場合は、
たとえその総会で社外取締役の選任議案を提出する場合であっても、説明が求
められます。
次に(2)ですが、
取締役が取締役(監査等委員会設置会社の取締役を除く。)の選任に関する議
案を提出する場合においては、株式会社が社外取締役を置いていない特定監査
役会設置会社(当該株主総会の終結の時に社外取締役を置いていないこととなる
見込みであるものを含む。)であって、かつ、取締役に就任したとすれば社外取
締役となる見込みである者を候補者とする取締役の選任に関する議案を当該株
主総会に提出しないときは、株主総会参考書類には、社外取締役を置くことが
相当でない理由を記載しなければなりません。
なお、これには経過措置があります。この省令の施行の日(平成27年5月1
日)前に「招集の手続が開始」された株主総会又は種類株主総会に係る株主総
会参考書類の記載については、なお従前の例によるとされており、この「招集
の手続が開始された」というのは、そのような招集手続のやり直しが必要にな
ってしまう時点、すなわち、株主総会参考書類の記載事項が(取締役会設置会
社においては取締役会の決議によって)決定された時点を指すものとされてい
ます。従って、平成27年5月1日より前に取締役会で招集の決定がなされた株主
総会参考書類については、「社外取締役を置くことが相当でない理由」の記載
義務はなく、5月1日以降に取締役会で招集の決定がなされた株主総会参考書類
については、上記の要件に当てはまる場合、記載義務が出てくるということに
なります。
さらに(3)です。
「事業年度の末日において監査役会設置会社(大会社に限る。)であって金
融商品取引法第二十四条第一項の規定によりその発行する株式について有価証
券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないものが社外取締役を置いて
いない場合には、株式会社の会社役員に関する事項として、第百二十一条に規
定する事項のほか、社外取締役を置くことが相当でない理由を事業報告の内容
に含めなければならない。」
とされています。
これにも経過措置があります。「施行日前にその末日が到来した事業年度
のうち最終のものに係る株式会社の事業報告及びその附属明細書の記載又は
記録については、なお従前の例による。ただし、施行日以後に監査役の監査
を受ける事業報告については、新会社法施行規則第124条第2項及び第3項
の規定を適用する。」ですから、監査役への事業報告提出が平成27年5月1
日より前であれば、このような記載の義務はなく、5月1日以降に監査役に提
出する事業報告については、上記の要件に当てはまる場合、記載義務が出て
くるということになります。
長くなってしまいましたが、2月決算以降の会社さんで、社外取締役を置いて
いない場合、
(1) 定時株主総会での説明
定時株主総会が平成27年5月1日以降なら必要(社外取締役を選任する
議案を提出する場合でも必要)
(2) 参考書類の記載
定時株主総会を招集する取締役会の決議が平成27年5月1日以降なら必
要(社外取締役を選任する議案を提出する場合は不要)
(3) 事業報告の記載
事業報告に係る監査役の監査を平成27年5月1日以降受ける場合は必要
(社外取締役を選任する議案を提出する場合でも必要)
ということかと思います。確認したつもりですけど、誤りがあればご指摘くだ
さい。
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3.[NEWS]社外取締役は会計士の救済策なの?
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なにやら、またこのような記事が出ているようですね。
Business journal「信用失墜、低報酬、食えない会計士急増 問題監査法人
続出、救済策が不祥事の温床にも」
http://biz-journal.jp/2015/03/post_9093.html
しかし、この表題では、会計士ってどんだけ終わってるんだっ。て感じですよ
ね。まあ、当たっているともいえるのですが、、、。
確かに、日本の会計士は、監査業務だけで生きて行こうと思うと、大手、中堅
監査法人しかないと言っても言い過ぎではないんじゃないでしょうか。
2.で記載しましたように、社外取締役の要件が厳しくなりますので、会計士
がその役割を担う可能性が高まるとして日本公認会計士協会でも会計士の紹介
を始めたわけですが、
「確かに会計制度に精通した会計士は、社外役員としてありうる選択肢なのか
もしれない。事実、会計士出身の社外役員は、弁護士出身者と並び、過去され
ほど珍しくはない。しかし、業界挙げて企業経営の現場に人を送り込もうとい
うのは、どこか居心地の悪さを感じさせる話だ。今回の新制度は、なり手不足
に悩む企業側の問題よりは、むしろ会計士業界の収入確保策の側面が強いよう
に感じる。」
あくまで、コーポレートガバナンスの強化を目論んだもので、会計士のために
こんなことやっているわけじゃないと思いますけど。そういうふうに見える方
もいらっしゃるんですね。今はそもそも会計士は不足している状況でもありま
す。
「監査報酬を底上げするルールづくりや、取引所が業界に負担金を支払うやり
方など、大胆な方策が議論されていい時期ではないだろうか。」
議論は大いにしていきたいと思いますが、会計士の報酬については、日本だけ
違うやり方をするというのはどうかと思います。基本的には純粋に監査報酬を
あげていただけるような方向で考えるべきかなと思うのですが。どうでしょう
か。
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4.[編集後記]
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今は確定申告シーズン真っ最中という感じでしょうか。
連日、皆様の確定申告の資料と格闘しています。こういう資料をながめていて
思うのですが、私たちは本当に皆様の個人情報のしかも収入関係という最も重
要な部分を預からせていただいて仕事をさせていただいておりますので、何よ
りも皆様にご信頼いただかなければいけない、と切に思います。そのためには、
十分な知識に裏付けられた適切、適時(これが難しいです)なご助言等、専門家
としての資質に基因するもののみならず、一社会人としてご信頼いただけるよ
う、立ち振る舞いすべてに気をつかわなければならないと思います。
思いますが、恥ずかしいこともたくさんお見せしているような気がしますね。
まだまだ、これから成長していきます。まずは後少し、確定申告頑張ります。
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*発行人: エキスパーツリンク
公認会計士・税理士・公認内部監査人(CIA) 紺野良一
*URL: http://www.expertslink.jp
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