【Weekly accounting journal】vol.343~回収可能性適用指針~
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇vol.343-2016.07.04
☆☆☆ Weekly Accounting Journal ☆☆☆
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こんにちは、エキスパーツリンクの紺野です。日本の会計基準は、今、IFRS
で揺れ動いています。一方で税制も改正されており、上場会社及び上場準備会
社の決算・経理実務は今後も引き続き、目まぐるしく変化していきます。これ
らのエッセンスを、上場会社及び上場準備会社の経理担当者の皆さん向けに、
出来る限り分かりやすくお伝えします。何らかの「気づき」をご提供すること
が出来れば幸いです。仕事の合間に軽くどうぞ!
文中意見にわたる部分は私どもの私見にもとづきます。このメールマガジン
の情報をもとに実務に適用される場合には、監査法人さんや顧問税理士さん等
にご確認ください。もちろん、エキスパーツリンクでもまずは無料で検討させ
ていただきます。
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◆◇今週のCONTENTS◆◇
1.[税務]例示集
2.[税務]繰延税金資産回収可能性~何が会計方針の変更なのか?
3.[NEWS]キヤノンによる東芝メディカルシステムズの株式取得
4.[監査]監査提言集
5.[編集後記]
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1.[税務]例示集
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国税庁が独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類(ローカル
ファイル)作成の例示集を公表しました。
http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/pdf/takokuseki_00.pdf
平成28年度の税制改正により移転価格の文書化制度が整備されたことはすで
にお知らせしましたが、独立企業間価格を算定するために必要と認められる書
類(ローカルファイルの正式名称です)の作成につき、租税特別措置法施行規
則で規定する各書類の具体的な例を示した例示集が公表されました。
今回の税制改正で、一定規模の国外関連取引を行った法人は当該国外関連取引
に係る独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類(ローカルファ
イル)を確定申告書の提出期限までに作成しなければならないこととされまし
た。
今まで、移転価格の文書化とは何をどう記載すればよいのかと思われていた方
も多かったのではないかと思います。例示集では、施行規則の順番に従ってど
のような書類を提出すればよいのかが、図も含めて示されています。切出し損
益計算書の作成過程についても示されていますので、移転価格文書のイメージ
が掴めるのではないでしょうか。
なお、連結売上高が1,000億円以上の多国籍企業グループの構成会社等の内
国法人および恒久的施設を有する外国法人については、多国籍企業情報の報告
制度(最終親会社等届出事項、国別報告事項及び事業概況報告事項)の対象と
されました。
このほど、「最終親会社等届出事項」、「国別報告事項」及び「事業概況報
告事項」の様式が公表されています。
最終親会社等届出事項
http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/pdf/takokuseki_01.pdf
特定多国籍企業グループに係る国別報告事項
http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/pdf/takokuseki_02.pdf
国別報告事項表1-3
http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/pdf/takokuseki_03.pdf
特定多国籍企業グループに係る事業概況報告事項
http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/pdf/takokuseki_04.pdf
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2.[税務]繰延税金資産回収可能性~何が会計方針の変更なのか?
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回収可能性適用指針、分かりづらいですよね。
そもそも何が変わったのか?
(1)(分類 1)から(分類 5)の分類ごとに要件を定め、各分類の要件に該当
しない場合、各分類に示された要件からの乖離度合いが最も小さいと判断
されるものに必ず分類する
(2)(分類 2)及び(分類 3)に係る分類の要件について、会計上の利益から
課税所得に変更する取扱い
(3)(分類 2)に該当する企業において、一定の要件を満たすスケジューリン
グ不能な将来減算一時差異を回収可能性があるとする取扱い
(4)(分類 3)に該当する企業において、5 年を超える見積可能期間において
スケジューリングされた一時差異等に係る繰延税金資産が回収可能である
ことを合理的に説明できる場合には回収可能性があるとする取扱い
(5)(分類 4)の要件に該当する企業であっても、合理的に説明できる場合に
は(分類 2)に該当するものとする取扱い
(6)(分類 4)の要件に該当する企業であっても、合理的に説明できる場合に
は(分類 3)に該当するものとする取扱い
が変わりました。
このうち、会計方針の変更にあたるものはどれかわかりますでしょうか。
(3)(4)(5)です。
(1)(2)(6)は、形式的には、監査委員会報告第 66 号における表現と異なる
表現をしているものの、監査委員会報告第 66 号の考え方を踏まえた上で取扱
いをより明確に定めたものであるということなのです。
じゃ、(1)(2)(6)で従来と変わることなんてないのでは?と思いますが、回
収適用指針上は、これを適用することにより、差額がでることも想定していま
す。
差額の会計処理は、
(3)(4)(5)→「会計方針の変更」にあたり、差額を適用初年度の期首の利益剰
余金に加減します。前年に遡及することはありません。
(1)(2)(6)→差額を損益に計上することとされています。
日本で一番多い3月決算の会社の場合、今まさに四半期決算に突入しようとし
ているところかと思います。回収可能性適用指針の適用に伴う影響額はどのよ
うに処理するのでしょうか。
四半期決算での税金計算に原則的方法(年度決算と同様の計算)を適用している
場合は、
会計方針の変更の影響額→期首の利益剰余金等に加減算
その他の影響額→損益等に計上
四半期決算での税金計算に四半期特有の会計処理を採用している場合は、
※年度の見積実効税率を税引前四半期純利益に乗じる方法等です。
会計方針の変更の影響額→期首の利益剰余金等に加減算するので、適用初年
度の見積実効税率の算定に際しては、考慮する必
要がありません。
その他の影響額→以下の二通りが考えられます。
a.その他の影響額を見積実効税率の算定に織り込む方法
b.その他の影響額を見積実効税率の算定に含めず、第1四半期に当該影響を
反映させる方法
a.の方法ですと、見積実効税率に影響が反映されて、各四半期にその影響が及
ぶことになります。
b.の方法ですと、原則的な方法を採用している場合と同様、第1四半期に損益
等に計上されることになります。
それでは、注記はどうなるのでしょうか。
○会計方針の変更による重要な影響額が生じる場合
会計方針の変更の注記を記載します。
・適用初年度期首の繰延税金資産(又は繰延税金負債)に対する影響額
・適用初年度期首の利益剰余金に対する影響額
・適用初年度期首のその他の包括利益累計額(四半期個別財務諸表では評価
・換算差額等)に対する影響額
○会計方針の変更による重要な影響がない場合
会計方針の変更の注記は不要
○その他の影響額が重要な場合
追加情報として回収可能性適用指針を当期から適用している旨を注記するこ
とが考えられます。但し、この場合でも影響額の記載は必要ありません。
といったところです。その他の影響額は、基本的にはあまり生じないように思
います。ご参考ください。
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3.[NEWS]キヤノンによる東芝メディカルシステムズの株式取得
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公正取引委員会は、平成28年6月30日、東芝の医療機器子会社「東芝メディ
カルシステムズ」をキヤノンが買収する手続きについて、独占禁止法違反に
つながるおそれがあるとしてキヤノンを注意し、東芝にも口頭で指導したこ
とを明らかにしています。
http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h28/jun/160630_2.html
この件は、事実関係としては、「~キヤノンは届出の前に,東芝メディカルの
普通株式を目的とする新株予約権等を取得し,その対価として,実質的には普
通株式の対価に相当する額を株式会社東芝(法人番号2010401044997)(以
下「東芝」という。)に支払うとともに,キヤノンが新株予約権を行使するま
での間,キヤノン及び東芝以外の第三者が東芝メディカルの議決権付株式を保
有することとなった。」ということです。
東芝は実質的に内輪である「キヤノン及び東芝以外の第三者」に東芝メディカ
ルの株式を平成28年3月17日に売却、約5,900億円の売却益を計上しています。
結果的に、「~本件企業結合は,一定の取引分野における競争を実質的に制限
することとはならないと認められた~」のでよかったのかもしれませんが、認
められない場合だってありうるわけで、東芝が東芝メディカルの株式を売却し
た時点では、審査の不確実性が残っていたはずです。
独禁法は、買収の当事者企業が一定規模以上の場合などに、事前に公取委に計
画を届け出ることを義務づけており、届け出から原則30日間は買収手続きを
進められません。じゃあ、一定規模未満の会社に先に売ってしまおうというこ
とだったわけです。
これにより、「今後,企業結合を計画する者が仮に上記のようなスキームを採
る必要があるのであれば,当該スキームの一部を実行する前に届出を行うこと
が求められる。」ということになりましたので、上記のようなスキームをする
意味がなくなるということなのでしょう。
仮にこの審査が通らなかったら、どうなっていたのでしょうか。東芝はこの株
式を買い戻す必要はなかったのか、会計処理は本当に正しかったのか、疑問が
残ります。
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4.[監査]監査提言集
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日本公認会計士協会は、平成28年7月1日、平成28年度版「監査提言集」を
公表しています。
http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/main/20160701db7.html
会員のみならず、一般の方もみることができます。監査人の考え方を知るのに
いいかもしれませんよ。
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5.[編集後記]
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日本の政府債務残高、実は世界最速ペースで減少しているという話をお聞きに
なったことはありますでしょうか。「実効ベースで見た場合、公的借り入れ負
担は年間にGDPの15ポイントに相当するペースで急減しているとの推計もある
(Bloomberg 6/2)」とのことです。これは、日銀によるマネタイゼーション
のためです。マネタイゼーションとは、政府が発行する国債を、中央銀行が通
貨を発行することで直接引き受けることをいいます。日本では、悪性のインフ
レを引き起こす恐れがあるとして、財政法第5条によって、特別の事由がある
場合を除き中央銀行(日銀)による国際の直接引き受けは禁止されています。日
銀が国債買い入れを増やしているというわけです。同記事によると、「公的債
務の一部は日銀によって恒久的にマネタイズされるため、全ての返済は不要だ
と日本の国民に明確にするのが有益だろう」という意見もある一方で、「明示
的なマネタイゼーションは外国人投資家による円相場押し下げを促し、インフ
レ高進につながる可能性があると分析。ただ、それが最終段階でどのような効
果をもたらすかが大きな懸念材料だとして、自殺行為に等しい政策だ。」とも
いわれています。ここではマネタイゼーションが償却のような意味で使われて
いるように思います。政府が借換債で自転車操業して、日銀が保有し続けてい
たら、本当に打ち出の小槌のような話ですね。日銀の問題は今後議論していく
べきと思います。
公認会計士紺野良一事務所のHPを作りましたので、是非ご覧ください。
トップページ
http://kaishaho-kansa.com/
個人会計士による会社法監査
http://kaishaho-kansa.com/audit/personal/
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*発行人: エキスパーツリンク
公認会計士・税理士・公認内部監査人(CIA)inactive 紺野良一
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