◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇vol.299-2015.08.17
      
   ☆☆☆ Weekly Accounting Journal ☆☆☆

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こんにちは、エキスパーツリンクの紺野です。日本の会計基準は、今、IFRS
で揺れ動いています。一方で税制も改正されており、上場会社及び上場準備会
社の決算・経理実務は今後も引き続き、目まぐるしく変化していきます。これ
らのエッセンスを、上場会社及び上場準備会社の経理担当者の皆さん向けに、
出来る限り分かりやすくお伝えします。何らかの「気づき」をご提供すること
が出来れば幸いです。仕事の合間に軽くどうぞ!

文中意見にわたる部分は私どもの私見にもとづきます。このメールマガジン
の情報をもとに実務に適用される場合には、監査法人さんや顧問税理士さん等
にご確認ください。もちろん、エキスパーツリンクでもまずは無料で検討させ
ていただきます。
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◆◇今週のCONTENTS◆◇
1.[税務]移転価格税制における取引単位
2.[最新J-GAAP]新繰延税金資産回収可能性適用指針反対!
3.[監査]財務諸表のレビュー業務
4.[監査]要約財務諸表に関する報告業務
5.[開示]金融庁、企業開示ルール見直しで秋にも会議設置へ
6.[編集後記]

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1.[税務]移転価格税制における取引単位
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移転価格税制における取引単位

我が社は海外子会社に対して、原材料を販売すると共に製造ノウハウに関する
使用許諾及び技術指導を行っています。我が社のように海外子会社と複数の取
引を行っている場合、移転価格の取引単位はどのようにすれば良いでしょうか。

移転価格は原則として取引ごとに検討しますが、原材料の販売取引と製造ノウ
ハウの使用許諾等が一体として行われている場合は、移転価格税制上も一体の
取引として独立企業間価格を算定することが認められる場合もあります。

例えば原材料の輸出価格が高いために親会社の所得が大きくなっている一方で、
ロイヤルティの料率が低く設定されている場合、個々の取引価格を分析すると、
海外の税務当局からは原材料を不当に高い金額で購入しているのではないかと
みなされ、移転価格課税が行われる可能性があります。

ただし、2つの取引を一体として見た場合は、日本の親会社と海外の子会社と
の間の所得がうまく配分されているかもしれません。

従って、個々の取引について独立企業間価格を算定する場合と、取引を一体と
して独立企業間価格を算定する場合のどちらが合理的であるかについて、事前
に検討しておく必要があります。

我が国の措置法通達でも、取引の実態から見て、複数の取引を一体としたほう
が独立企業間価格を算定するうえで合理的であると認められる場合は、複数の
取引を一体として取り扱うことができるとしています。

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2.[最新J-GAAP]新繰延税金資産回収可能性適用指針反対!
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企業会計基準適用指針公開草案第54号「繰延税金資産の回収可能性に関する
適用指針(案)」(平成27年5月26日公表)に対するコメント募集期間が終
わり、コメントが公表されています。

特に質問8-3に対する回答について、いくつかご紹介します。質問8-3は適用
初年度に当該適用指針の適用によって生じる変更を会計方針の変更として扱い、
特定の経過的な取扱いとして、適用初年度の期首の影響額を利益剰余金等に加
減するとする案に同意するかどうかをたずねるものです。

一般社団法人日本経済団体連合会
「実務の安定性・継続性の観点から、本案において66号を基本的に踏襲したに
もかかわらず、適用初年度の取扱いを「会計方針の変更」と断じて「損益」処
理を認めない点(質問8-3)、国際的な基準(IFRS・米国基準)の水準を超える
開示を検討している点(質問7)については、会計基準の高品質化につながら
ず、強く反対する。」

一般社団法人全国銀行協会
「適用による期首時点の影響額は、「会計方針の変更」として利益剰余金に加
減するのではなく、「見積りの変更」として当期の損益に計上すべきである。」

一般社団法人日本貿易会
「本公開草案の考え方について概ね同意する。
但し、以下の通り、適用初年度における期首の影響額を損益に計上する法が適
切との意見も聞かれた。
66号は実質的な会計基準としてこれまで幅広く実務に定着しており、今回の
適用指針によってこれまで硬直化していた繰延税金資産の回収可能性の判断の
見直しがなされたものであるため、実質的には会計方針の変更ではなく、見積
りの変更に該当すると考えられる側面もある。この場合、本公開草案でいう特
定の経過的な取扱いとして、適用初年度の期首の影響額を利益剰余金等に加減
することは適切でない。」

といったところです。

従来の取扱いでは、概ね、過度に保守的に資産計上していた可能性があるわけ
ですが、これは、なんらかの見積誤りがあったというよりは、あくまで公的な
指針に従って処理した結果がそうなっていたという話であります。それを今度
は、新しい指針に従って処理をしたら、資産計上額が大きくなってしまいまし
た、というだけのことなのです。これを見積の変更といえるかというと、そう
とはいいにくいのかなとは思います。

しかし、それでは結局、そもそも繰延税金資産の回収可能性の判断とは見積と
いえるのかどうかという話になってしまわないでしょうか。

そうなんですよ。

実は、監査委員会報告66号も今回の適用指針も、基本的にこれらは、”会計
基準等”に該当するものだといわれています。ですから、基本的に公開草案で
は、会計方針の変更として取り扱っているんですよね。

といわれても、

会計方針なの?それも違うように思います。難しいところかもしれませんね。
個人的には、これらの指針自体、会計基準ではなく、見積のガイダンスという
位置づけにとどめ、あくまで見積の変更としたほうがよかったのではないかと
思っています。

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3.[監査]財務諸表のレビュー業務
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日本公認会計士協会監査基準委員会は、保証業務実務指針2400「財務諸表の
レビュー業務」(公開草案)及び監査基準委員会研究報告「保証業務実務指針
2400「財務諸表のレビュー業務」に係るQ&A」(公開草案)を公表しまし
た。これは、国際監査・保証基準審議会(IAASB)が公表している国際レビュ
ー業務基準(ISRE)2400「過去財務諸表に対するレビュー業務」に相当する
ものです。

http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/main/24002400.html

ここでいう財務諸表のレビュー業務とは、限定的保証業務といわれています。
想定利用者の財務諸表に対する信頼性を高めるため、業務実施者は、財務諸表
が、すべての重要な点において、適用される財務報告の枠組みに作成されてい
ないと信じさせる事項が認められなかったかどうかに関し、結論を表明すると
いうものです。

日本では、レビューといえば、四半期レビューなわけですが、金融商品取引法
に基づき四半期財務諸表に対して実施される四半期レビュー業務には、既存の
「四半期レビュー基準」が適用されるので、当該報告等は適用されません。

じゃ、どんなときに適用されるのでしょうか。

「例えば、会計監査人非設置会社が金融機関へ任意で提出する財務諸表、期中
財務諸表又は貸借対照表のみの個別の財務表等、レビュー対象の財務情報が期
中財務情報かねんどの財務情報か、完全な一組の財務諸表かを問わず、さらに、
適用される財務報告の枠組みが一般目的か特別目的かを問わない。」
とされています。

需要がどれくらいあるのかわかりませんが、このような業務が出てくるという
ことなのでしょうか。

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4.[監査]要約財務諸表に関する報告業務
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日本公認会計士協会監査基準委員会は、監査基準委員会報告書810「要約財
務諸表に関する報告業務」(公開草案)を公表いたしました。こちらも、国際
監査基準において整備されている要約財務諸表に関する報告業務に相当するも
のです。

http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/main/810.html

こちらは、一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して監査を実施した
監査人が、当該監査された財務諸表を基礎として作成された要約財務諸表に関
して報告業務を行う場合における監査人の責任について、定めたものというこ
とです。

お知らせまで。

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5.[開示]金融庁、企業開示ルール見直しで秋にも会議設置へ
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金融庁は上場企業の情報開示のあり方を見直すため、秋にも会議を設置するそ
うです。

http://jp.reuters.com/article/2015/08/14/fsa-idJPKCN0QJ0X520150814

四半期開示の重複排除などが議論されるとみられるとのことです。

確かに、四半期決算短信と四半期報告書の重複は無駄ですよね。これはどうに
かしてほしいところです。

第1と第3をなくすという話もあるようですし、注目です。

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6.[編集後記]
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マイナンバーですが、まだまだわからないことが多いです。特にセキュリティ
管理。
いろいろなソフトウェアを使って給与計算から、源泉徴収票・法定調書の作成
等をするわけですが、個人的に疑問なのは、紙による印刷です。ソフトウェア
にはアクセス制限をすることで、また履歴を残すことで接近制限がなされるよ
うに思います(そうは言っても後述のようにスマホで写真とってしまえば終わ
りなのでは?と思ったりします。)が、これを紙で印刷して保管していたらど
うなるのでしょうか。ソフトウェアのベンダーも工夫しているようで、印刷す
ると特定個人情報は印刷できないようにするとか、適切な権限がある方しか印
刷できないようにするとか、いう対策はしているようですが、それでも特定個
人情報が掲載されている形で印刷してしまったら、これを別途管理しなければ
いけませんよね。ここからはもうアナログな世界にならざるをえないよう思い
ますね。今はスマホで写真とってしまえば簡単に盗めますしね。引き続き勉強
します。

公認会計士紺野良一事務所のHPを作りましたので、是非ご覧ください。

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個人会計士による会社法監査
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*発行人: エキスパーツリンク
 公認会計士・税理士・公認内部監査人(CIA) 紺野良一
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